鋳鉄

鋳鉄とは

鋳鉄とは、鉄を主成分とする合金の一種です。

鋳造法によって作られ、液状の鉄を型に流し込んで固めることで形成される仕組みです。一般的に炭素含有量が2%以上で、他の合金元素も含んでいます。耐久性や耐熱性に優れているため、建築や機械部品など様々な産業で広く使用されています。

鋳鉄は非常に強固で耐久性が高いため、長期間にわたって使用することが可能です。建築材料や機械部品など、耐久性が求められる用途に適しています。 また、高温に耐える能力も高いため、エンジン部品やストーブ部品などの高温で使用する機器に適用可能です。

鋳造法を用いて作られるため、複雑な形状やデザインの部品を比較的容易に製造することができます。設計上の自由度が高いことを意味し、様々な用途に対応できる点も特徴の一つです。大量生産に適しており、製造コストが比較的低く抑えられます。

鋳鉄の使用用途

鋳鉄は様々な場面で使用されます。以下はその一例です。

1. 自動車産業

鋳鉄は自動車産業において広く使用されます。

その中でも特に重要な部品としてはエンジンブロックです。エンジンブロックはエンジンの基本的な構造であり、シリンダーを収める部分です。鋳鉄はその強度や耐熱性が高く、高圧力や高温を扱うエンジン内部の環境に対応することが可能です。

また、ブレーキディスクやトランスミッションケースなど、自動車の駆動や制動に関連する部品にも鋳鉄が利用されます。

2. 鉄道産業

鉄道産業においても鋳鉄は重要な役割を果たしています。例えば、鉄道車両の車輪は鋳鉄製であり、その耐久性や強度が適切に保たれる必要があります。また、ブレーキディスクや台車などの部品も鋳鉄で作られることがあり、鉄道の安全性や信頼性に直接関わる重要な要素です。

3. エネルギー産業

エネルギー産業においても、鋳鉄は様々な部品に使用されます。一例として、発電所のボイラーや炉の部品は高温や高圧力に耐える必要があり、鋳鉄が有利です。また、タービンのハウジングなど、エネルギーの変換や発電プロセスに関連する部品も鋳鉄で製造されます。

これらの部品は、安定したエネルギー供給を確保するために欠かせないものです。また、鋳造によって個々の設計に合った製品を製造することができます。

4. 家庭用品

家庭用品としては、調理器具やストーブなどに使用されます。耐久性と熱保持性が高いため、効率的に伝熱することが可能です。しっかりと手入れを行えば何十年も使えるほど耐久性があります。

鋳鉄の原理

鋳鉄の製造プロセスにおける基本的な原理は、鉄や他の合金元素を高温で溶かし、それを型に流し込んで固めることです。

鋳鉄は鉄や他の合金元素からなる溶湯を使用します。鉄鉱石やリサイクルされた鉄スクラップなどの鉄源が鋳造所に供給され、必要に応じて炭素やシリコンなどが添加されます。これらの原料は高温の炉で溶解され、鋳造に適した液状の金属溶湯が得られる仕組みです。

鋳造する部品の形状に応じて、砂型や金属型などの型が作られます。砂型は鋳造物の形状に合わせて砂で作られており、金属型は金属で作られた鋳型です。溶湯が高温の状態で保持され、準備された型に注がれます。

注がれた溶湯は型内で急速に冷却されます。冷却によって溶湯は凝固し、型の形状に従って鋳造物が固形化する仕組みです。鋳造物が十分に冷えたら型から取り出され、不要な部分を切り取ったり、表面を磨いたりして仕上げられます。

鋳鉄の種類

鋳鉄にはいくつかの種類が存在します。以下はその一例です。

1. ねずみ鋳鉄

ねずみ鋳鉄 (英:Gray Cast Iron) は、灰色や灰黒色をしている鋳鉄です。主な成分は鉄と炭素であり、炭素含有量が2%以上です。耐摩耗性や振動吸収性が高い特性を有するため、エンジンのシリンダーブロックやブレーキディスクなど、耐久性が求められる部品に広く使用されます。

2. 白鋳鉄

白鋳鉄 (White Cast Iron) は、白い外観を有する鋳鉄です。炭素含有量が非常に高く、3.4%以上です。非常に硬いがもろい性質を持ち、加工が難しい点が特徴です。

3. まだら鋳鉄

まだら鋳鉄 (Mottled Cast Iron) とは、ねずみ鋳鉄と白鋳鉄の中間的な組織と色合いを有する鋳鉄です。ねずみ鋳鉄と白鋳鉄の混合物であり、組織がまだら模様を形成します。ねずみ鋳鉄や白鋳鉄が適さない特定の要求仕様に対応する際に使用されることがあります。