膜ろ過装置

膜ろ過装置とは

膜ろ過装置とは、液体または気体の混合物から特定の成分を分離するための装置です。

膜状の選択的なフィルターを使用して、分子のサイズや形状、電荷、または他の特性に基づいて分離を行います。水処理や食品および飲料製造などの様々な産業で幅広く使用されます。種類も豊富で、逆浸透膜装置や超遠心ろ過装置など様々です。

フィルターの微細な孔を通じて分子を選択的に分離するため、高い分離効率を実現します。これにより、目的物質の高純度で回収することが可能です。また、低温で行われるため、熱に敏感な成分を保護しながら処理できます。

膜ろ過装置の使用用途

膜ろ過装置は様々な用途で使用されます。以下はその一例です。

1. 水処理プラント

逆浸透膜ろ過装置を使用することで、塩分や有機物を水から除去し、飲料水や工業用水の除塩に使用されます。海水淡水化プロセスで広く応用され、飲料水供給や農業用水の確保に貢献します。また、一般ろ布の膜ろ過装置は微細な微生物や不純物を水から除去し、高品質の飲料水を提供するために使用されることが多いです。

2. 食品・飲料産業

乳清やチーズの製造過程で乳蛋白質や脂肪を分離するのに使用されます。また、ジュースの製造においては、果汁を濃縮して飲料の製造に使用される濃縮ジュースを生成するために使用されることも多いです。ビールやワインなどの酒類についても、不純物や微生物を除去してクリアな製品を生産するために用いられます。

3. 医薬品製造

医薬品の製造工程では、化合物やバイオマーカーを分離・精製し、製品の純度を高めるために使用されます。また、薬剤やタンパク質の濃縮に使用され、効率的な製造プロセスを実現することが可能です。細胞培養中の生細胞を収穫するための手段として、微細な膜を利用した膜ろ過装置も販売されています。

4. 化学工業

化学工業ではポリマー製造などにおいて膜ろ過が使用される場合があります。一例として、ポリマー合成反応後の溶液から不純物を除去し、ポリマーの質を向上させるために膜ろ過が採用されることがあります。また、ポリマーの濃縮や精製にも膜ろ過が使用されます。

膜ろ過装置の原理

膜ろ過装置の原理は選択性のある膜を利用して、液体または気体の混合物を分離することに基づいています。膜の微細な孔や隙間を通過する分子のサイズや形状に基づいて、混合物の成分を分離する仕組みです。

膜ろ過プロセスでは、流体に圧力を加えて膜を通過させます。特に逆浸透では高い圧力をかけることで溶媒を通過させることで濾過します。一般的に加圧装置にポンプを使用することが多いです。

膜ろ過装置の特徴としては、一般的に単純な操作で濾過する点です。一度設置された膜は圧力や濃度勾配を利用して流体を通過させるだけで、自動的に分離が行われます。ただし、膜は徐々に物質を捕集して流体が通りづらくなるため、定期的な洗浄や交換が必要です。

膜ろ過装置の種類

膜ろ過装置には様々な種類が存在します。以下はその一例です。

1. 逆浸透膜ろ過装置

逆浸透膜ろ過装置は逆浸透膜を使用して水中の塩分や有機物を除去する装置です。逆浸透膜は水分子のみを通過させ、溶質や塩分を表面に保持する膜です。RO (Reverse Osmosis) 膜とも呼ばれます。

高圧をかけて水を透過させることで、塩水などを淡水に戻すことが可能です。したがって、海水淡水化や飲料水の浄化、工業用水の処理など、水の浄化や塩分除去に広く使用されています。

2. ナノろ過膜装置

ナノろ過膜装置は微細な孔を持つ膜を使用して粒子や有機物を除去する装置です。ナノろ過膜 (Nanofiltration:NF膜と略す) はRO膜よりも通過する溶質のサイズが大きい点が特徴です。飲料水の浄化や食品加工業での濃縮・除塩などの様々な分野で使用されます。

3. 微細ろ過膜装置

微細ろ過膜装置は微生物や大きな粒子を除去するために使用される装置です。微細ろ過膜 (Microfiltration:MF膜と略す) はROやNFよりも粗い膜であり、通常は0.1〜10μmの孔を有します。飲料水処理や電子工業などで微生物や微細な固体の除去に広く使用されます。

4. ガス分離膜装置

ガス分離膜装置は特定のガスを分離するために使用される膜ろか装置です。選択的なガス透過率を持つ特殊なポリマー膜やセラミック膜が使用されます。空気分離や天然ガス処理、水素分離などの分野で使用されており、特定のガスの濃縮や純化に有効です。