長距離無線LAN

監修:株式会社コンテック

長距離無線LANとは

長距離無線LANとは、無線LAN (Wireless Local Area Network) 技術を使用して、より長い距離で無線接続をする技術のことです。有線LANで利用されるIPベースの通信技術が利用できるので汎用性の高いシステムを構築することが可能です。

一般的な無線LANは比較的短い距離での通信で利用されていることが多く、数十メートルから百メートル程度の範囲内で利用されます。長距離無線LANはそれよりも遠くまで通信ができる仕組みを利用しています。

最近ではIEEE802.11ah(Wi-Fi HaLow™)のような920MHzを利用して長距離通信が可能な新しい無線LANの規格が登場しており注目されています。

長距離無線LANを使用することで、長い距離で有線LANを敷設するための機材や工事費用などのコストを削減することが可能です。特に有線ケーブルの設置やメンテナンスが難しい場合には有効な選択肢です。

長距離無線LANの使用用途

長距離無線LANは広範囲な場所での通信や遠隔地とのネットワーク接続が必要な場面で有利です。以下はその用途一例です。

1. 農業・水産業のDX化

農業や水産業など広いエリアでの設備の管理や環境の監視に長距離無線LANが役立ちます。一例として、遠隔地の農場にセンサーやカメラを設置して防犯に寄与しつつ、土壌の湿度や光量などのデータを集め、効率的な農業を支援することが可能です。

2. インフラ設備の監視

ダムや河川の監視、長いトンネルや橋などでは、広範囲にわたる設備の維持・管理に通信ネットワークが必要となっています。センサーやカメラを使用して、異常な振動や温度変化、水位などのデータを収集し施設の維持を支援します。長距離無線LANの導入によって設備の施工・維持管理のコスト削減ができます。

3. 鉱業・エネルギー産業

鉱業業界では採掘施設を監視し、生産データを管理するために利用されます。石油・ガス業界では広いプラント工場内でのタンクやパイプラインを監視し、セキュリティや運転監視に活用しています。長距離無線LANは多くの産業用途で使用されており、特に遠隔地や厳しい環境での通信に有利です。

長距離無線LANの原理

長い距離を無線LANで通信を行う方法として、以下のような種類があります。
それぞれの方法の原理とメリットを説明します。

1. IEEE802.11ah(Wi-Fi HaLow™)

920MHz帯の周波数を利用する通信方式のひとつで、2016年にIEEE802.11ahとして策定され2022年から日本でも利用可になった新しい種類のWi-Fi規格です。
・2.4GHz/5GHz帯を用いる従来のWi-Fiと比べて伝送エリアが広い
・免許不要でフルオープンかつ標準規格であるIP通信が可能
・画像や映像に適した、数Mbpsのスループットの通信速度が期待できる
などの特長を持ちIoTの通信システムとして様々な分野で活用が期待されています。

2. 長距離無線に特化した2.4GHz/5GHzの無線LAN

一般的な家庭やオフィスで使用される無線LANは比較的近距離で通信を行うための技術ですが、高利得アンテナや高指向性アンテナの採用により長距離での無線LANの接続を実現しています。指向性の高いアンテナを利用するため、ビル間通信や、難アクセス地域での拠点間のネットワークの構築に向いています。

3.4.9GHz帯無線LAN

電波干渉の少ない4.9GHz帯周波数を利用した無線LANで、都市部に加えてルーラル地域におけるインターネットサービスや、離島や山間部など有線方式が困難であった地域においてネットワークサービスへの利活用が期待されています。
4.9GHz帯を利用するには、総務省への登録が必要であり、登録には無線従事者免許(第3級陸上特殊無線技士以上)を有する資格者、登録費用、電波使用料が必要です。

長距離無線LANとして利用する場合の特長をまとめた表を掲載します。

比較項目 802.11ah (920MHz)
Wi-Fi HaLow™
802.11b/g/n
(2.4GHz)
Wi-Fi
802.11ac
(5GHz)
Wi-Fi
802.11j
(4.9GHz)
アンテナ種類 ロットアンテナ 指向性アンテナ 指向性アンテナ 指向性アンテナ
通信距離 数十m~1km 数百m~数km 数百m~数km 数km~数十km
通信速度
免許/申請 不要 不要 不要 必要
導入費用(少)
セキュリティ

長距離無線LANの選び方

長距離無線LANは信頼性の必要な用途での利用が求められるので、製品選びには注意が必要です。無線周波数の干渉に強い、必要な転送データ容量や必要な速度を適切に選択する必要があります。長距離無線LAN を選ぶ際は、以下のポイントをチェックすることが大切です。

1. 通信距離

通信距離は長距離無線LANの主要な要因の一つです。通信が必要な距離に応じて、製品の送信出力と受信感度を確認します。高い送受信機能を持つ製品は、長距離通信に適しています。

2. 通信速度

通信速度はデータを送受信する際の最大速度を示します。用途に応じて、必要な通信速度を検討します。高速通信が必要な場合は高帯域幅をサポートする製品を選択し、最適な通信速度を確保します。

3. 高信頼性

インフラ設備や産業用の環境では、機器の故障や電波の干渉が発生することがあるため、高い信頼性を持つ機器を選ぶ必要があります。

4. 防塵・防水性能

長距離無線LANが屋外環境や過酷な気象条件で使用される場合、防塵性能と防水性能が重要な場合もあります。製品のIP評価を確認し、防塵・防水性能を評価します。特に海上や港湾、屋外設置の場合には、耐久性が求められます。

5. セキュリティ機能

データセキュリティは無線LAN通信において重要な要因です。データの暗号化やアクセスコントロールなどのセキュリティ機能を確認します。WPA3などの最新のセキュリティプロトコルをサポートしていることが重要です。

6. 供給性

様々な条件をクリアし、無線環境を構築したとしても同じ無線機が入手できなければ再度一から現場の状況に合わせた設定が必要になります。長期間安定したシステムを構築する場合は、長期供給の可能な機器を選定することが重要です。

7. メンテナンス性

長距離無線LAN 機器が故障した場合、修理に時間がかかることがあります。ネットワークが停止し大きな損失を被る可能性があるため、トラブルが発生してもすぐに復旧できるように、メンテナンス性が高く、交換や修理が簡単に行える機器を選ぶことが重要です。

本記事は長距離無線LANを製造・販売する株式会社コンテック様に監修を頂きました。

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