インドリンとは
インドリン (英: Indoline) とは、無色〜黒褐色の液体です。
IUPAC名は、2,3-ジヒドロ-1H-インドール (英: 2,3-Dihydro-1H-indole) 、また別名として2,3-ジヒドロインドール (英: 2,3-Dihydroindole) とも呼ばれます。
化学式C8H9N、分子量119.16の複素環式化合物です。CAS登録番号は496-15-1で、インドール (C8H7N) の2、3位が還元された構造を有します。インドリンの窒素原子が2位に位置する異性体は、イソインドリン (C8H9N) といいます。
インドリンの性質
インドリンの沸点は220℃で、融点 は-21°C、比重 (密度) は1.063g/mL (at25℃) です。エタノールに極めて溶けやすく、水にはほとんど溶けない性質を有しています。
インドリンの窒素原子は、芳香環を形成しないため電子密度が減少せず、インドールに比べ塩基性が高くなります。酸解離定数 (pKa) は5.2です。酸解離定数とは、酸の強さを定量的に表すための指標のひとつです。pKa が小さいほど強い酸であることを示します。また、窒素原子は求核性を有するので、窒素原子上に置換基を導入することが可能です。
引火点が92℃の可燃性液体であることから、消防法では「危険物第四類・第三石油類・危険等級Ⅲ」に指定されています。そのほかの毒劇法や安衛法といった、主な国内法規での指定はされていません。
インドリンの使用用途
インドリンは、医薬品などの有機合成化合物の中間体として使用されています。医薬品中間体とは、原料メーカーより仕入れた原料から薬品メーカーが最終の薬剤の成分となる原薬をつくるまでの工程でできる化合物を指す言葉です。
また、黄色系色素としても知られていることから顔料・染料といった分野での活用が知られています。黄色系色素としてのインドリンは、エレクトロニクス分野でも「色素増感型太陽電池」といった光電変換素子としての活用が期待されています。
インドリンのその他情報
1. 製造方法
インドリンは、インドール (C8H7N) の接触還元により合成可能です。コールタールの蒸留精製により得られ、接触還元には、銅クロマイト、ラネーニッケル、ニッケル−チタンなどの金属触媒が使用されます。
保管の際はガラス製の遮光された容器に入れて密閉し、換気がよく涼しい場所に保存します。
2. 使用上の注意
引火性
インドリンは引火性液体であるため、高温のものや裸火、火花などの着火源から離れて使用することが大切です。また、静電気放電によりインドリンの蒸気に引火する可能性があるため、静電気を避けるためにアースを取るなどの適切な措置が必要です。
火災が生じた場合は、インドリンの熱分解で刺激性のある有毒なガスや蒸気を放出することがあります。消火には二酸化炭素や粉末消火剤、 水噴霧、フォーム、消火砂が有効で、使えない消火剤は特にありません。
人体への影響
インドリンは腐食性や刺激性があるため皮膚に付着させないことが大切です。使用時は必ず白衣や作業着などの保護衣や保護手袋を着用し、保護衣の袖は捲らないようにします。万が一皮膚に付着した場合は石けんと大量の水で洗い流します。痛みなどの症状が続く場合は、医師の診療を受けましょう。
眼に対し強い刺激性を持ちます。重篤な損傷を起こす可能性があるので、使用時は必ず保護メガネまたはゴーグルを着用しましょう。万が一インドリンが眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗し、必ず医師の診察を受けます。
また、特定標的臓器毒性や気道刺激性があります。インドリンの蒸気を直接吸い込まないよう、局所排気装置であるドラフトチャンバー内で使用することが大切です。
参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0109-0175JGHEJP.pdf
https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/dt/html/GI_10_001/GI_10_001_496-15-1.html