酸化イットリウム

酸化イットリウムとは

酸化イットリウム (英: Yttrium oxide) とは、白色をした粉末の固体です。

イットリウムと酸素から構成される無機化合物で、化学式はY2O3、分子量は225.81、CAS登録番号は1314-36-9です。別名でイットリアとも呼ばれます。

酸化イットリウムの使用用途

酸化イットリウムの使用用途は主に下記の通りです。

1. 発光材料

酸化イットリウムは、カラーテレビのブラウン管に赤色を与えるYVO4:EuやY2O3:Eu、Y2O2S:Eu発光体の製造に使われています。これらの材料では、発光スペクトルの線幅が非常に狭く、純度の高い赤色を得ることが出来ます。自然光のもとで見るのと同じように色を忠実に再現できるという「高演色蛍光灯」の蛍光体にも使用されています。

2. レーザー材料

酸化イットリウムは、有望な固体レーザー材料の一つです。特に、イッテルビウムをドーパントとするレーザーは、無変調連続波とパルス状領域の両方で効率よく動作します。そのほかにも、Y (イットリウム) 、A (アルミニウム) 、G (ガーネット) の結晶に、Nd (ネオジウム) を添加した結晶体を使用したレーザー (YAGレーザー) の材料にもなっています。

3. 歯科用セラミック

酸化イットリウムは、メタルフリーな歯科用セラミックのジルコニアを安定化させるために使用されます。これは、セラミック修復用材料として使用される、非常に硬いセラミックです。歯科で使用されるジルコニアは、酸化イットリウムの添加で安定化された酸化ジルコニウムで、イットリア安定化ジルコニア (英: Yttria-stabilized zirconia、YSZ) と呼ばれます。

4. マイクロ波フィルター

酸化イットリウムは、非常に効果的なマイクロ波フィルターであるイットリウム鉄ガーネット (YIG) の製造にも使用されます。YIGは、マイクロ波、音響、光学、磁気光学アプリケーション(マイクロ波YIGフィルター、音響送信機、音響トランスデューサなど) で使用されます。

5. その他

酸化イットリウムは、その他にも超電導用材料、ファインセラミックスの原料、光学レンズの添加剤、ニッケル水素電池の材料といった幅広い分野で利用されています。

酸化イットリウムの性質

酸化イットリウムは、融点/凝固点が2,420℃で、沸点は約4,300℃、密度は5.01g/cm3、熱伝導率は、27W/(m・K) です。水にはほとんど溶けず、希硝酸に溶けるという性質を有します。蛍石型の立方晶の結晶構造を持ち、空間群はIa-3で八面体型の配位構造をとっています。

酸化イットリウムのその他情報

1. 酸化イットリウムの製法

2010年に新しい鉱物種として承認されたイットリアアイト (英: Yttriaite) は、イットリウムの天然型です。シベリアの極ウラル地方の川の砂鉱床の天然タングステン粒子の含有物として産出します。他の鉱物の化学成分としては、スウェーデンのストックホルム近くのイッテルビーという町の鉱山の希土類鉱物から、1789年にヨハン・ガドリンによって最初に分離されました。

2. 法規情報

国内法規上の適用は、安衛法で「名称等を表示すべき危険物および有害物」「名称等を通知すべき危険物および有害物・別表第9No. 54」の指定がされているのみで、そのほか消防法といった主だった法令での適用はありません。

3. 取扱いおよび保管上の注意

取扱い及び保管上の注意は、下記の通りです。

  • 容器を密栓し、冷暗所に保管する。
  • 屋外や換気の良い区域のみで使用する。
  • 粉塵が飛散しないように注意する。
  • 静電気放電に対する予防措置を講じる。
  • 使用時は保護手袋、保護眼鏡を着用する。
  • 取扱い後はよく手を洗浄する。
  • 皮膚に付着した場合は、大量の水で洗い流す。
  • 眼に入った場合は、水で15~20分間注意深く洗う。
  • 眼の刺激が続く場合は、医師の診断・手当を受ける。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1314-36-9.html

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