フェニルエチルアミンとは
図1. 2-フェニルエチルアミンの基本情報
フェニルエチルアミンとは、化学式がC8H11Nで表される有機化合物です。
フェニルエチルアミンには、2-フェニルエチルアミンと1-フェニルエチルアミンがあります。2-フェニルエチルアミンはフェネチルアミンとも呼ばれます。
2-フェニルエチルアミンはアルカロイドの1種です。アルカロイドとは、窒素原子を含む天然の有機化合物の総称です。天然には哺乳類の体内に存在し、チョコレートなどの微発酵食品にも含まれています。生体内では、神経伝達物質として作用します。なお、労働安全衛生法などの国内法規によって指定されていません。
フェニルエチルアミンの使用用途
2-フェニルエチルアミンやその誘導体は、実験的に抗うつ作用を持つことが証明されています。そのため、抗うつ剤として利用可能です。
2-フェニルエチルアミンによって、「楽しさ」や「期待感」などを司るホルモンである、ドーパミンやアドレナリンの分泌を促します。特に、2-フェニルエチルアミンの働きにより、恋愛でホルモンの分泌が活発になると考えられており、「恋愛ホルモン」として注目されています。
フェニルエチルアミンの性質
2-フェニルエチルアミンの融点は−60°C、沸点は195°Cです。常温常圧で無色の液体です。天然で2-フェニルエチルアミンは、アミノ酸のフェニルアラニンの酵素的脱炭酸により生成します。空気に触れると、二酸化炭素 (CO2) と反応し、炭酸塩が生じます。
脳内で2-フェニルエチルアミンは、神経伝達物質として機能していますが、分解されやすいです。そのため、常に微量存在している「微量アミン」に分類されます。
フェニルエチルアミンの構造
2-フェニルエチルアミンは第一級アミンに分類されます。分子量は121.183g/molで、密度は0.9640g/cm3です。
2-フェネチルアミンの骨格は、複雑な化合物の部分構造に見られます。具体例として、モルヒネのモルフィナン環やLSDのエルゴリン環などが挙げられます。
フェニルエチルアミンのその他情報
1. 2-フェニルエチルアミンの誘導体
図2. 2-フェニルエチルアミンの誘導体
2-フェニルエチルアミンには、フェニル基、アミノ基、側鎖に化学的修飾を受けた数百種類もの誘導体が存在します。その中には神経伝達物質であるチラミンやDNAを構成する塩基であるチロシンなど、生体に必要不可欠な物質が多いです。
アンフェタミンは、2-フェニルエチルアミンのアミノ基に隣接してα-メチル基を有します。アンフェタミンの窒素原子がメチル化されたものは、メタンフェタミンです。
カテコールアミンは、2-フェニルエチルアミンのフェニル基の3位と4位にヒドロキシ基を持っています。カテコールアミン類の具体例として、ドーパミン、レボドパ、アドレナリン、ノルアドレナリンが挙げられます。芳香族アミノ酸であるチロシンやフェニルアラニンは、α位にカルボキシ基を持つフェネチルアミン誘導体です。
2. 1-フェニルエチルアミンの特徴
図3. 1-フェニルエチルアミンの基本情報
1-フェニルエチルアミンは2-フェニルエチルアミンの構造異性体です。無色の液体で、密度は0.94g/mLであり、融点は-65°C、沸点は187°Cです。鏡像異性体を持っているため、光学分割 (英: optical resolution) によく使用されます。塩基性を示し、アンモニウム塩やイミンを形成します。
アセトフェノンの還元的アミノ化によって、1-フェニルエチルアミンを合成可能です。ギ酸アンモニウムを用いたロイカート反応 (英: Leuckart reaction) でも、1-フェニルエチルアミンが生成します。
1-フェニルエチルアミンの分割には、l-リンゴ酸 (英: l-malic acid) を使用可能です。右旋性の構造異性体はl-リンゴ酸と結晶化するため、溶液中に左旋性の構造異性体が残ります。