エチルアミン

エチルアミンとは

エチルアミンとは、化学式C2H7Nであらわされる有機化合物です。

モノエチルアミンとも呼ばれます。モル質量は45.08g/mol、融点は-80℃、沸点は16.6℃です。また、CAS番号は75-04-7です。

この物質の外観は無色の液体または気体であり、アンモニアに似た特異臭を有しています。ほとんどの有機溶媒に溶けて、アンモニアと同じように水に溶けると弱い塩基性を示します。

エチルアミンの使用用途

エチルアミンは、医薬品、染料、界面活性剤、塗料などのさまざまな物質の原料として、実験室スケールから工業用途にまで幅広く用いられています。常温では気体で存在することもあるので、水溶液の状態で使用されることが多いです。

1. バーチ還元

有機合成においては、出発原料としてはもちろんですが、特にバーチ還元 (ベンケサー還元) における1級アミンとしてよく用いられています。バーチ還元は、ナフタレンなどの芳香族化合物、や各種アルキン化合物などの不飽和化合物を還元 (水素化) する反応です。

この反応は、液体アミン化合物にナトリウムやリチウムなどの金属を溶かして作る試薬を用います。金属を溶かすと金属原子にアミンの非共有電子対が配位した構造を持つ錯イオンが生成し、同時に溶媒中に電子が生じます。

バーチ還元では、金属由来の電子が直接分子に作用するので、非常に安定した構造を持つベンゼン環の部分還元が可能な点で有用な反応です。また、芳香族化合物だけでなく、アルケンやアルキンなど通常の還元剤では還元することが難しい分子に対しても還元する方法として用いられてきました。

2. 求核剤

また、アミンは非常に強い求核性を持つため、酸クロリドと反応させてアミドを合成したり、置換反応を利用して分子に窒素原子を導入する場合に使用できます。ただし、通常の置換反応では必要以上に置換反応を起こしてしまう危険性が高いので、イミンを合成してから還元するなどの方法も検討しなければいけません。

特に、界面活性剤の中には長いアルキル鎖に第4級アミンが結合しているような構造を持っているものが存在し、そのような界面活性剤を合成する場合にもエチルアミンが使用されることがあります。

3. 錯体

また、アミンは非共有電子対を持つので、多くの金属や電子不足な原子と配位することができます。具体例として、三フッ化ホウ素と塩を形成させた構造である三フッ化ホウ素ものエチルアミンは、樹脂を合成する際の硬化促進剤として用いられています。

エチルアミンの性質

エチルアミンの製造方法として、ニトロエタンやアセトニトリルの還元で得る方法や、ヘキサメチレンテトラミン臭化エチルを反応させ、加水分解して得る方法などが挙げられます。また、工業的にはエチレンとアンモニアに適切な触媒を作用させる方法や、エタノールをアンモニアで置換する方法、アセトアルデヒドの還元的アミノ化などによっても合成することが可能です。

エチルアミンは、GHS分類において可燃性・引火性ガス、急性毒性、皮膚腐食性/刺激性、眼刺激性、特定標的臓器毒性 (単回・反復ばく露) に分類されます。皮膚や目に付着してしまった場合は、すぐに多量の水で洗い流さなければいけません。また、ゴム手袋や保護メガネをするなど、皮膚や目に付着しないように気を付ける必要があります。

エチルアミンの法規制は、名称等を表示・通知すべき危険物およびリスクアセスメントを実施すべき危険有害物、また消防法において第4類特殊引火物に指定されています。引火点が-17℃と非常に低いです。

エチルアミンのその他情報

ジエチルアミンとトリエチルアミン

窒素原子にさらに多くのエチル基が結合したジエチルアミンやトリエチルアミンも、同様の使用用途を持ちますが、これらは常温で液体なので扱いが簡単でよく用いられています。

ジエチルアミンは除草剤に使用されているので、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンのうちで最も多くの量が使用されてきました。

参考文献
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/6341

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