硫化鉛

硫化鉛とは

硫化鉛とは、化学式がPbSの無機化合物です。

「硫化鉛(II) (英: Lead(II) sulfide) 」や「ガレナ (英: Galena) 」とも呼ばれています。方鉛鉱と呼ばれる鉱物として産出され、鉛の重要な化合物です。

硫化鉛の加熱によって、有毒なPbやSOxガスが発生します。PRTR法で「第1種指定化学物質」に指定されています。また、労働基準法では「疾病化学物質」です。労働安全衛生法で「名称等を表示すべき危険有害物」「名称等を通知すべき危険有害物」「リスクアセスメントを実施すべき危険有害物」に、毒物および劇物取締法で「劇物」に指定されています。

硫化鉛の使用用途

硫化鉛は、顔料、塗料、陶器の釉薬、潤滑油に配合される摩擦添加剤、合金原料など、幅広く利用されています。

塗料の黄鉛やモリブデートオレンジは、クロム酸鉛硫酸鉛およびモリブデン酸鉛を組み合わせて製造可能です。しかし、鉛の人体への悪影響を考慮して、第2回国際化学物質管理会議で、鉛塗料の廃絶が目標に定められました。日本でも鉛不使用の塗料が開発されていますが、コストの大幅な上昇が課題です。

さらに、硫化鉛は鉛の主要鉱物であり、化学変換にも大きく役立ちます。主に酸化物を還元すると、金属鉛が得られます。

硫化鉛の性質

硫化鉛の融点は1,114°C、沸点は1,281°Cです。硫化鉛は溶解性が低く、ほとんど害がありません。ただし精錬での熱分解で、危険な粉塵が生成します。炭酸鉛は溶解性が高いため、炭酸鉛から硫化鉛を得るときには、鉛中毒を引き起こします。

硫化鉛の構造

硫化鉛は黒色の立方晶系結晶を形成します。テルル化鉛(II)やセレン化鉛(II)と同じく、半導体の性質を示し、最も古くから用いられている半導体です。ただしIV-VI族の半導体とは違い、塩化ナトリウム型の結晶構造を有します。配位構造は正八面体型で、格子定数はa=5.936Åです。

硫化鉛のナノ粒子や量子ドットも研究されてきました。伝統的に、鉛の塩とあらゆる硫化物イオンを組み合わせると作れます。近年では、硫化鉛のナノ粒子が、太陽電池へ応用できると期待されています。

硫化鉛のその他情報

1. 硫化鉛(II)の合成法

鉛イオンの水溶液に硫化水素や硫化物を加えると、硫化鉛の黒色沈殿が生成します。この反応の平衡定数は3×106mol/Lです。無色や白色から黒色へ劇的に色が変わるため、定性無機分析に使用されていました。現在でも、硫化水素や硫化物を検出するための方法として、酢酸鉛試験紙があります。

2. 硫化鉛(II)の応用

古くから硫化鉛は、赤外線センサーの素子に利用されてきました。放射された素子の温度上昇に反応している熱センサーとは違い、直接光子に反応します。

光子が素子に当たった際に生じる微弱電流と素子の電気抵抗の変化が観測されます。室温で硫化鉛は波長1〜2.5μmの放射に反応し、波長領域は高温の物体だけが放射する赤外領域の短波長側です。硫化鉛素子をペルティエ素子や液体窒素により冷やすと、検出される波長領域が約2〜4μmに変わります。

長波長の赤外線を検出するためには、テルル化カドミウム水銀 (HgCdTe) やアンチモン化インジウム (InSb) が優れています。誘電率が高く、ゲルマニウム、ケイ素、HgCdTe、InSbより検出器の動作が遅いです。

3. 硫化鉛(IV)の特徴

硫化鉛(IV) (英: Lead(IV) sulfide) は化学式がPbS2で表される化合物で、モル質量は271.332 g/molです。高圧で硫黄と硫化鉛(II)を600°C以上で反応させると得られます。

硫化鉛(IV)は硫化スズ(IV) (SnS2) と同じく、ヨウ化カドミウム型構造で結晶化し、Pbが+4の形式酸化数を取ることを示しています。硫化鉛(IV)はp型半導体で、熱電材料として利用可能です。

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