静電容量タッチセンサとは
静電容量タッチセンサとは、電界において静電容量の変化を利用して検出するタッチセンサです。
静電容量とは、導電体 (コンデンサなど) において、蓄えられている電荷の量を表す物理量です。人体は導体 (電流を流すことができる) であるため、手などの人体の一部分がタッチパネルなどの表面に近づくと、指先などの接触部分とセンサーに用いられている電極の間に静電容量が生じます。静電容量方式のセンサーでは複数の指を用いるマルチタッチジェスチャーが可能であり、スマートフォンを始めとする様々な製品に使用されています。
また、素材の柔軟性から湾曲状でもタッチが可能であることや耐水性に優れることなども長所の1つです。
静電容量タッチセンサの用途
静電容量タッチセンサは、スマートフォンやタブレット、ゲーム機、ATMや券売機などのタッチパネル、ウェアラブル機器に広く使用されています。ワイヤレスイヤホンを耳につけているかどうかを判定するための用途や、高精度のものではアルコールディスペンサーの残量検知を目的とした用途もあります。
キットなどとして一般に販売されているものは、主にスイッチモジュールやフィルムセンサーなどとして用いられる場合が多いです。
静電容量タッチセンサの原理
静電容量タッチセンサは電極を用い、導体である人がタッチした際に生じる静電容量の変化を利用する仕組みです。静電容量タッチセンサでは、主にITO電極が用いられます。
ITO (Indium-Tin Oxide) 電極とは、ガラス基板上にITOを蒸着した電極で、電気化学測定などに汎用される電極です。自己容量方式と相互容量方式の2種類の仕組みに分類されます。
1. 自己容量方式
自己容量方式のセンサは、センサ電極を1種類だけ用います。ITO電極間には電界が形成されており、この電界に導体である人体が指などで触れることで、電界と手の間に擬似的にコンデンサが生じます。このとき起こる静電容量の増加を検知し、センサーとして機能する仕組みです。
高感度で、分厚いカバーをかけた上からでも読み取りができるというメリットがあります。ただし、後述する投影型の場合はXY電極の行や列でタッチ位置を判断するため、マルチタッチ時には触れていない箇所を誤ってタッチ箇所として認識してしまう場合がある点が短所です。
2. 相互容量方式
相互容量方式のセンサでは、電極は送信用と受信用の2種類に分かれています。1つは電界を発生させる電極であり、他方は電気力線を吸収する電極で、この2者はコンデンサー様の関係です。
センサーに手を近づけると、2つの電極の間にある電界の一部が指先に遮られます。電界と手がコンデンサの関係になった結果、電極間の静電容量は減少します。相互容量方式は、このようにして2つの電極間に生じる電界の変化を検出する仕組みです。
静電容量タッチセンサの種類
静電容量タッチセンサの種類には、表面型と投影型の2種類の構造があります。
1. 表面型
表面型では、ガラス基板の4つの角に電極が配置されています。基板の表面には電界が生じており (自己容量方式) 、タッチすることにより静電容量の変化が起こります。静電容量の変化を4つの電極で検知し、タッチした位置を検出する仕組みです。
長所としては、耐久性が高く、水や油など表面の異物の影響を受けにくいことが挙げられます。また、構造がシンプルであるため低コストであり、大画面などに適していることも長所です。短所としては、マルチタッチができないことが挙げられます。