ヨウ素酸

ヨウ素酸とは

ヨウ素酸 (英: Iodic acid) とは、ヨウ素のオキソ酸の一種で、化学式HIO3であらわされる無機化合物です。

CAS登録番号は、7782-68-5です。比較的強い酸であり、強い酸化力を持ちます。また、他のハロゲン化物のオキソ酸と異なり、結晶として単離することが可能な物質です。

ヨウ素酸の使用用途

ヨウ素酸の主な使用用途は、医療用の収れん剤、殺菌消毒剤、分析試薬です。ヨウ素酸は、空気中で比較的安定であるため、取り扱いが容易な物質です。収れん剤や殺菌消毒剤としてのヨウ素酸は、ヨウ素の持つ酸化作用による各種菌やウイルスに対する殺菌消毒作用を利用しています。

また、ヨウ素酸は分析化学の分野において、各種ヨウ素化合物、特にヨウ化カリウムの定量を目的とする滴定試薬としてしばしば用いられます。これはヨウ素酸の酸化剤としての性質を利用したものです。水銀や鉛の定量にも利用されます。また、強酸として酸塩基滴定に用いることも可能です。この場合は、メチルレッドやメチルオレンジを指示薬として弱および強塩基の滴定に利用されています。

ヨウ素酸の性質

ヨウ素酸の基本情報

図1. ヨウ素酸の基本情報

ヨウ素酸は、分子量175.91、融点110℃であり、常温での外観は、白色の結晶または粉末です。

密度は4.62g/mL、酸解離定数pKaは0.75であり、比較的強い酸です。水に極めて溶けやすい性質があります (水への溶解度: 269g/100ml (20°C) )。

ヨウ素酸の種類

ヨウ素酸は、主に研究開発用試薬製品や、産業用ファインケミカルとして一般に販売されています。研究開発用試薬製品では、25g、50g、100gなどの容量の種類があり、実験室で取り扱いやすい容量での提供です。通常、室温で取り扱い可能な試薬製品として扱われます。

産業用ファインケミカルとしては、25kgや200kgなど、工場等で取り扱いやすい大型容量での提供となっています。

ヨウ素酸のその他情報

1. ヨウ素酸の合成

ヨウ素酸の合成

図2. ヨウ素酸の合成

ヨウ素酸の製造方法は、塩素、または硝酸や、次亜塩素酸、過酸化水素などを使用してヨウ素を酸化する方法が知られています。それ以外では、五酸化二ヨウ素を水に溶解する方法があります。

2. ヨウ素酸の化学反応

ヨウ素酸の水溶液中での解離と標準酸化還元電位

図3. ヨウ素酸の水溶液中での解離と標準酸化還元電位

ヨウ素酸は、水溶液中では酸性を示し、解離してヨウ素酸イオンを生じる物質です。酸性溶液中では強い酸化剤としてはたらきますが、塩基性溶液では酸化力は弱い性質があります。

強力な酸化剤であるため、還元性物質や可燃性物質とは反応性がある物質です。また、光により変質するおそれがあります。保管の際は、有機物、可燃物、アルコール類、金属類、還元剤との混触を避けるべきとされます。

3. 他のオキソ酸との対比

他のハロゲン元素のオキソ酸に、塩素酸や臭素酸がありますが、これらの物質は単離することができず、水溶液などの状態でしか存在できません。一方、ヨウ素酸は、単離することが可能であり、結晶化することができます。

ヨウ素の酸化数の異なる他のオキソ酸としては、ヨウ化水素HI (酸化数-1) 、次亜ヨウ素酸 HIO (+1) 、亜ヨウ素酸HIO2 (+3) 、過ヨウ素酸 (メタ過ヨウ素酸 (HIO4) とオルト過ヨウ素酸 (H5IO6) 、酸化数+5) があります。

4. ヨウソ酸の塩

ヨウ素酸の塩として、ヨウ素酸アンモニウム、ヨウ素酸カリウム、ヨウ素酸ナトリウムなどを挙げることができます。これらの物質は、消防法において、危険物第1類に指定されている物質です。

5. ヨウ素酸の有害性情報

ヨウ素酸は、GHS分類において、皮膚腐食性・刺激性のある酸化性固体であると認められています。

ヨウ素酸は、労働安全衛生法において、名称等を表示すべき危険物及び有害物、及び、名称等を通知すべき危険物及び有害物に指定されている物質です。また、ヨウ素酸単体は消防法での規制はありませんが、各種ヨウ素酸塩 (ヨウ素酸アンモニウムなど) は、消防法において危険物第1類に指定されています。

参考文献
https://labchem-wako.fujifilm.com/sds/W01W0109-0736JGHEJP.pdf

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