メトキシベンゼン

メトキシベンゼンとは

メトキシベンゼンの基本情報

図1. メトキシベンゼンの基本情報

メトキシベンゼン (英: methoxybenzene)とは、化学式がC7H8Oで表される有機化合物です。

メチルフェニルエーテル (英: methyl phenyl ether) やアニソール (英: anisole) とも呼ばれているエーテルです。昆虫のフェロモンの一種で、アニスの実のような甘い香りを有します。

メトキシベンゼンは、直射日光、高温、熱、火花、炎、静電気などを避けて、換気が良く涼しい場所に密閉して保管する必要があります。強酸化剤との混触も避けるべきです。労働安全衛生法で危険物・引火性の物に該当し、消防法では「第4類危険物・第二石油類 (非水溶性液体) 」に指定されています。

メトキシベンゼンの使用用途

メトキシベンゼンは、有機溶剤、合成中間体、駆虫剤、石鹸、工業用香料など、安価な香料の原料として用いられています。

メトキシベンゼンはオルト・パラ配向の大きな反応性を示すため、メトキシベンゼンと無水酢酸と反応させると、p-メトキシアセトフェノンが得られます。p-メトキシアセトフェノンは、花の香りの香料やフレーバーとして利用可能です。

このほか、メトキシベンゼンと五硫化二リンを反応させることで、ローソン試薬 (英: Lawesson’s reagent) が得られます。ローソン試薬とは、有機化合物上の酸素原子を硫黄原子へ交換可能な硫化剤です。化学式は[(CH3OC6H4)PS2]2で表されます。

メトキシベンゼンの性質

メトキシベンゼンの融点は-37.5°Cで、沸点は155.5°Cで、常温で無色の快い芳香を有する液体です。エタノールやジエチルエーテルによく溶解しますが、水にほとんど溶けません。

ラットでの半数致死量 (LD50) は3,700mg/kgで、毒性は比較的ありません。引火点は52°Cと低く、主な危険性は可燃性です。

メトキシベンゼンは電子供与性のメトキシ基の共鳴効果によって、ベンゼン環の電子密度が高いです。そのため求電子的反応では、オルト-パラ配向性 (英: ortho-para orientation) を示します。ハメットの置換基定数 (英: Hammett constant) は、パラ効果が−0.268で、メタ効果が+0.115です。

メトキシベンゼンの構造

メトキシベンゼンはベンゼンの水素1個を、メトキシ基 (–OCH3) に置き換えた構造を有しています。すなわちメチル基 (-CH3) とフェニル基 (-C6H5) が、エーテル (-O-) によって結合した構造です。

メトキシベンゼンの示性式はC6H5OCH3と表されます。モル質量は108.14g/molで、密度は0.995g/mLです。

メトキシベンゼンのその他情報

1. メトキシベンゼンの合成法

メトキシベンゼンの合成

図2. メトキシベンゼンの合成

メトキシベンゼンは、硫酸ジメチルフェノールをアルカリ溶液中で反応させて合成します。

ウィリアムソン合成 (英: Williamson synthesis) によって、ナトリウムフェノキシドとハロゲン化メチルの反応でも合成可能です。

2. メトキシベンゼンの反応

メトキシベンゼンの反応

図3. メトキシベンゼンの反応

メトキシベンゼンは無水酢酸と反応すると、p-メトキシアセトフェノンを合成可能です。アセトフェノンとは異なり、p-メトキシアセトフェノンはメトキシ基の影響によって、さらにアセチル化が進行します。

メトキシベンゼンは、金属カルボニルとπ錯体を容易に形成します。具体例はCr(η6-メトキシベンゼン)(CO)3です。

五硫化二リン (P4S10) とメトキシベンゼンの反応によって、ローソン試薬が得られます。メトキシベンゼンのエーテル結合は非常に安定ですが、ヨウ化水素酸によってメチル基を除去可能です。メトキシベンゼンのバーチ還元 (英: Birch reduction) によって、1-メトキシシクロヘキサ-1,4-ジエンが得られます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/100-66-3.html

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