ヒ化ガリウム

ヒ化ガリウムとは

ヒ化ガリウム (英: Gallium arsenide) とは、ガリウムのヒ化物であり、組成式GaAsで表される物質です。

別名や通称には、ガリウムヒ素、ガリヒ素などの名称があります。CAS登録番号は、1303-00-0です。ヒ化ガリウムは半導体の性質を持つ物質であるため、半導体材料として一般に知られています。

ヒ化ガリウムの使用用途

ヒ化ガリウムの主要な使用用途は、太陽電池、高速通信用などの半導体材料です。同じ半導体材料であるシリコンと比較すると電子移動度が高いことが特徴です。

1.43eV のバンドギャップを持つIII-V族半導体に分類されます。電子移動度は 8,500cm2/(V s)、ホール移動度は 400cm2/(V s) です。不純物を添加されていない (ドーピングされていない) 基板において高い抵抗値を示す半導体は、半絶縁性基板と呼ばれます。

ヒ化ガリウムは半絶縁性基板であり電子移動度が高いことから、リーク電流や寄生容量を低く抑えることが可能であることが利点です。シリコンに比べ高価で加工が難しいデメリットがありますが、高速動作機能を持ち、また消費電力も約3分の1と少ないため小型化は容易です。

応答が速く消費電力も少ない半導体素子の1つです。これらの利点を活かし、HEMTやHBTなどのの高速通信用の半導体素子の材料として多く用いられています。 また、直接遷移形の材料であるため赤色・赤外光の発光ダイオードに広く用いられています。

ヒ化ガリウムの性質

ヒ化ガリウムの基本情報

図1. ヒ化ガリウムの基本情報

ヒ化ガリウムは、式量144.64、融点1,238℃であり、常温常圧では灰色の結晶固体です。密度は5.32g/mL閃亜鉛鉱型構造をとり、ヒ化ガリウムが酸や水蒸気に触れると、ヒ素と水素の化合物であるアルシンを生成します。

塩酸には可溶であるものの、水への溶解度は <0.1g/100mL (20°C) と低く、DMSO、95%エタノール、メタノール、アセトンにも、<1mg/mg程度しか溶解しません。

ヒ化ガリウムの構造

ヒ化ガリウムの結晶構造

図2. ヒ化ガリウムの結晶構造

結晶構造は常温で安定であり、閃亜鉛鉱型 (ジンクブレンド型) 構造、すなわちZnS、HgS、CuClと同じ構造を取ります。

ヒ素化合物であるにも関わらず単独では弱い毒性を示します。しかし、酸や水蒸気と反応すると、有毒なアルシンを生成します。

ヒ化ガリウムの種類

ウェハーのイメージ図

図3. ウェハーのイメージ図

ヒ化ガリウムは、主に半導体材料として工業用に販売されています。粉末の純粋なヒ化ガリウムとして販売されている製品の他に、GaAsウェハーや、GaAsエピタキシャルウエハなどとして多くの製品が販売されています。

ウェハーとは、非常に薄く小さい板であり、多くは円形です。GaAsエピタキシャルウェハーは、移動体通信やワイヤレスLANの送信用パワーアンプ、RF回路切替スイッチや、光ディスクドライブ (CD、DVD) の書込みや読込み用を行うレーザーダイオードに用いられています。

ヒ化ガリウムのその他情報

ヒ化ガリウムの安全性情報

ヒ化ガリウムはIARC発がん性リスク一覧でGroup1に分類されており、発ガン性が指摘されている物質です。それ以外には、下記のようなリスクが指摘されています。

  • 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
  • 血液系、免疫系の障害
  • 反復ばく露による呼吸器、血液系、生殖器 (男性) の障害

毒物及び劇物取締法では、 毒物・除外品目に指定されており、労働基準法では疾病化学物質、がん原性化学物質に指定されています。労働安全衛生法でも名称等を表示・通知すべき危険物及び有害物質とされている他、PRTR法で第1種指定化学物質に指定されるなど、多くの法令によって規制を受ける有害な物質です。法令を遵守した正しい取り扱いが求められます。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1303-00-0.html

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