アクリル酸ブチル

アクリル酸ブチルとは

アクリル酸ブチルとは、化学式C4H9O2CCH=CH2で表されるアクリル酸とノルマルブタノールをエステル化した化合物です。

CAS登録番号は141-32-2で、別名、アクリル酸n-ブチル、ブチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、BAなどとも呼ばれます。強いエステル臭をもつ、無色~わずかに薄い黄色の引火性液体です。

アクリル酸ブチルの使用用途

アクリル酸ブチルの主な使用用途は、合成ポリマーの原料です。アクリル酸ブチル単独重合体のポリアクリル酸ブチルや、他のアクリル酸エステルなどとの共重合体は様々な工業製品に利用されています。モノマーにアクリル酸ブチルを導入することで、重合体のガラス転移温度 (Tg) を調整したり、可撓性 (弾性) を付与できます。

ポリアクリル酸ブチルやアクリル酸ブチルの共重合体は、繊維処理剤、粘接着剤、塗料、アクリル樹脂やアクリル繊維等の合成樹脂、アクリルゴムなどとして利用されています。

1. アクリルゴム

アクリルゴムは、耐熱性と耐油性に優れた合成ゴムです。、自動車や産業機械関係のパッキング、シール、ガスケットおよびホース等に利用されています。

2. アクリル樹脂

アクリル樹脂は、透明性や加工性に優れた樹脂です。無機ガラスの代用品として、建築や乗物の窓材、照明器具のカバー、道路標識、日用品、事務用品、工芸品など、暮らしの中で幅広く利用されています。

3. アクリル塗料

アクリル塗料は、安価で発色がよいことが特長です。耐候性が低いため、紫外線の影響を受けない室内などで利用されることが多い塗料です。

4. アクリル系粘接着剤

アクリル系粘接着剤はアクリル系のポリマーを原料とした透明性や耐候性、耐熱性に優れた粘着剤です。主剤と硬化剤を混合する2液型と、熱で硬化する1液型があります。プラスチックや金属の接着に適しています。

5. その他の利用

アクリル酸ブチルの重合体は、他にも、紙加工・皮革加工などにも使用されています。アクリル酸エステルの重合体を紙の表面に被膜加工することで、紙に耐熱性や耐候性、耐油性を付与することができます。

また、結合剤として、化粧品に利用されることもあります。例えば、 (アクリル酸ブチル/イソプロピルアクリルアミド/ジメタクリル酸PEG-18) クロスポリマーは保水性被膜剤として添加されることがあります。

アクリル酸ブチルの性質

アクリル酸ブチルは融点 -64 ℃、沸点 145 ℃で常温では液体です。また、水にはほとんど溶けませんが、各種有機溶媒 (エーテル、アセトン、アルコール) には溶けます。密度は0.90g/mL (20°C) です。

消防法で危険物第4類に分類されており、保管量や保管方法などについて規制を受ける場合があります。火災時の消火では水を使用してはならず、乾燥砂や炭酸ガス、泡消火剤などでの消火が有効です。

アクリル酸ブチルは反応性が高く、過酸化物などの重合開始剤や光、熱などによって重合し、ポリマーを生成します。したがって、市販品にはヒドロキノンフェノチアジン、ヒドロキノンエチルエーテルなどが重合禁止剤として添加されていることがあります。また、重合反応時には熱が発生し、反応が暴走した場合には火災などの事故につながる可能性があるため、重合の際は注意が必要です。

アクリル酸ブチルのその他情報

アクリル酸ブチルの毒性

アクリル酸ブチルの毒性は下記の通りです。

  • 急性毒性 (経皮) : 区分4 飲み込むと有害

  • 急性毒性 (吸入) : 区分3 皮膚に接触すると有害

  • 皮膚腐食性/刺激性: 区分2 皮膚刺激

  • 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性: 区分2A 強い眼刺激

  • 皮膚感作性: 区分1 アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ

  • 特定標的臓器毒性 (単回ばく露) : 区分1 呼吸器系、臓器の障害

  • 特定標的臓器毒性 (反復ばく露) : 区分1 呼吸器系および長期にわたる、または反復ばく露による臓器の障害

  • 水生環境有害性 短期 (急性) : 区分2 水生生物に毒性

アクリル酸ブチルには刺激性があり、目や皮膚に付着すると、発赤や痛みを生じる可能性があります。したがって、使用時には保護手袋や保護メガネなどの着用が必要です。経口摂取すると、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢などを生じる可能性があります。

蒸気の吸入を防ぐために、適切な排気設備があるところで使用することが推奨されています。

また、水生生物への毒性もあるため、環境への流出や廃棄には注意が必要です。廃棄の際は、許可を受けた産業廃棄物処理業者に委託するなど、条例や国内規制に沿った廃棄が必要となります。

参考文献
https://www.env.go.jp/chemi/report/h24-02/pdf/chpt1/1-2-2-02.pdf
https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/A0142
https://www.ink-jpima.org/pdf/201304.pdf

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