テトラヒドロフラン

テトラヒドロフランとは

テトラヒドロフランの基本情報

図1. テトラヒドロフランの基本情報

テトラヒドロフランとは、環内に1個の酸素原子をもつ、飽和5員環複素環式化合物の一種です。

別名、THFやオキソランとも呼ばれます。年間約20万トン生産されており、工業的に最も広く使用される生産方法は、1,4-ブタンジオールの酸触媒脱水です。

酸素の配位性を用いて、ルイス酸や金属イオンの配位子に使用可能です。ボランとの安定な錯体であるBH3•THFなどの溶液が市販されています。

引火点は−14.5°Cと低いため、日本では消防法によって「危険物第四類(第一石油類 危険等級2水溶性)」に指定されています。

テトラヒドロフランの使用用途

テトラヒドロフランは、溶解力の強い溶剤です。その特徴を活かす形で、下記のような用途に使用されています。

  • ポリ塩化ビニル樹脂等の合成樹脂の溶剤や有機合成反応溶媒
  • 合成皮革等のコーティング溶剤
  • ビニル系・エポキシ系接着剤の溶剤
  • 印刷インキ溶剤
  • 感光性樹脂等の特殊な樹脂用の溶剤

上記のように、溶剤として幅広く使用されています。さらに、グリニャール反応 (英: Grignard reaction) やウィッティッヒ反応 (英: Wittig reaction) 等の反応溶媒や、医薬・農薬等の製造における反応及び精製溶媒としても使用可能です。

テトラヒドロフランは、ナイロン・ポリエーテル・ポリテトラメチレンエーテルグリコール等の合成原料としても使用されています。石油化学工業における抽出剤としての利用や、塩化ビニル樹脂の熱収縮フィルムや防湿剤といった用途でも用いられています。

テトラヒドロフランの性質

テトラヒドロフランは、エーテルに似た独特の香りを有する無色の液体です。多くの有機溶媒や水によく溶けます。テトラヒドロフランの密度は20°Cで0.8892g/mL、融点は−108.4°C、沸点は66°Cです。

テトラヒドロフランは酸化によって、γ-ブチロラクトン (英: Gamma-Butyrolactone) に変えることもできます。また、テトラヒドロフランは飽和の5員環に、1つの酸素を含む環状エーテルです。テトラヒドロフランの化学式はC4H8O、分子量は72.11です。

テトラヒドロフランのその他情報

1. テトラヒドロフランの合成法

テトラヒドロフランは、ホルムアルデヒドアセチレンの縮合により得られる1,4-ブチンジオールの水素化で生成します。

フランまたは無水マレイン酸の接触還元によっても、テトラヒドロフランを得ることが可能です。

さらにn-ブタンを酸化して無水マレイン酸を得たのちに、水素化することで、テトラヒドロフランを得る方法もあります。

2. テトラヒドロフランによる過酸化物の生成

テトラヒドロフランによる過酸化物の生成

図2. テトラヒドロフランによる過酸化物の生成

テトラヒドロフランは、空気と長く接触すると、爆発性を有する過酸化物を生成します。とくに長期保存したテトラヒドロフランを、蒸発乾固することは危険です。テトラヒドロフランの酸化を防ぐために、市販品にはp-クレゾール (英: p-Cresol) やヒドロキノン (英: Hydroquinone) が少量添加されています。

3. テトラヒドロフランの開環重合

テトラヒドロフランの開環重合

図3. テトラヒドロフランの開環重合

テトラヒドロフランは開環重合によって、ポリエーテルであるポリテトラメチレンエーテルグリコール (英: Poly tetramethylene ether glycol) を生成します。ポリテトラメチレンエーテルグリコールはPTMGやPTMEGと略されることもあり、ポリオキシテトラメチレングリコール (英: Polyoxy tetramethylene glycol) やポリテトラヒドロフラン (英: Poly tetrahydrofuran) とも呼ばれます。

一般的なポリテトラメチレンエーテルグリコール製品の分子量は、1,000から2,000です。20℃前後でワックス状に固化します。弾性繊維のスパンデックス (英: Spandex) や熱可塑性エラストマーを代表とする、ポリウレタン (英: Polyurethane) の原料に利用されます。

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