ジベレリンとは
ジベレリン (化学式: C19H22O6) とは、植物の生育に関わる植物ホルモンの総称です。
自然界に存在する化学物質で、日本人技師である黒沢英一によって世界で初めて発見された植物ホルモンです。藪田貞治郎が結晶化と構造決定をしました。ジベレリンと見なされる物質は100以上もあり、現在もその種類が増えています。
室温においては、白色の粉末状態で存在します。ジベレリンは植物に対して、茎の伸長、発芽の促進、開花の促進、子房の肥大などの生理作用をもつため、極めて重要視されています。ジベレリンの応用により、食糧危機やエネルギー枯渇などの解決も期待され、研究が進められています。
ジベレリンの使用用途
ジベレリンは、ジベレリンは、植物ホルモンの1種であり、植物の成長や発育に重要な役割を持っています。植物の生育に作用する効果を利用して、主に農業分野で農作物の生育状態を制御するための農薬として製造され使用されています。
1. 成長の促進
ジベレリンは、植物の細胞の伸長や増殖を促進する効果があります。ジベレリン処理を施すことで、茎や葉の成長が促進され、植物の全体的な成長が促進されます。
2. 休眠打破
ジベレリンは、植物種子の休眠期間中にも生産され、休眠状態を解除する役割を持っています。休眠状態の植物にジベレリンを施すことで、休眠期間が短縮され、成長期への移行が可能です。
3. 単為結実促進
単為結実は、花粉の受粉が同じ花または同じ植物で行われ、種子を結実させる現象です。ジベレリンは、単為結実を促進する効果があります。単為結実は、種子の遺伝子組み換えを行うことができるため、育種や品種改良などに利用されます。
4. 開花促進
ジベレリンは、植物の開花を促進する効果があります。植物の開花には、環境条件や植物自身の成長状況などが影響しますが、ジベレリンを施すことで、開花時期の制御や花の品質向上につながります。
ジベレリンの性質
ジベレリンは、水にはほとんど溶けませんが、アルコールやジメチルスルホキシド (DMSO) にはよく溶けます。また、ジベレリンは、酸性条件下では不安定になることがあります。
ジベレリンは、光や酸素によって分解しやすく、不安定です。また、熱によっても分解するため、保存時には冷暗所で保管することが推奨されています。
植物の成長や発育に必要不可欠なホルモンの1つです。植物の成長や発育に関する研究や農業、園芸分野で利用されています。また、主に「伸長成長の促進 」「休眠打破・発芽促進 」「アミラーゼの誘導 」「花芽形成・開花促進」「単為結実促進」のような生理作用を有しています。
ジベレリンの構造
ジベレリンは、テルペノイド化合物の1種であり、アジセン系ジテルペン骨格を持ちます。実際には100種類以上の異なる構造を持つ化合物の総称であり、その多くが炭素数20のジテルペノイド化合物で構成されています。ジベレリンの一般的な構造は、C19H22O6という分子式で表されます。
ジベレリンは、イソプレン単位が結合して形成されるテルペノイド構造を持ち、炭素数19のジテルペン骨格に3つの水酸基、2つのカルボキシル基を持った複雑な構造です。5つの環を持ち、そのうち4つの環はシクロペンタノペンタエン骨格からなり、1つの環はシクロヘキサノン骨格からなります。これらの構造は、ジベレリンの生物学的活性や特性に影響を与えています。
ジベレリンのその他情報
ジベレリンの製造方法
ジベレリンは、天然には植物から抽出されますが、工業的には化学合成が主に用いられます。
1. 化学合成法
シクロヘキサノンを出発物質として、シクロペンタノペンタエン骨格を生成させ、その後、酸化やアシル化などの反応を経て、ジベレリンを得ることができます。
ジベレリンは、微生物を用いた発酵法でも製造される場合があります。
2. 微生物発酵法
放線菌やカビ類を培養し、それらが生成する代謝産物に含まれるからジベレリンを得ることができます。この方法によって得られるジベレリンは、純度が低く、生成が煩雑であることが欠点です。