クロム

クロムとは

クロムとは、原子番号が24、元素記号がCrで表される金属元素です。

クロムの化合物はさまざまな色を持つことから、ギリシャ語の色を意味するchromaをもとに、ルネ=ジュスト・アユイ (英: René Just Haüy) によって名前がつけられました。

クロムは主にクロマイト鉱石 (FeCr2O4) から採取されます。世界のクロム資源の90%以上は、南アフリカとカザフスタンの2カ国に集中しており、非常に偏っています。 

クロムの使用用途

クロムは、主に鉄鋼の分野で利用されています。クロムを12%以上含むクロムと鉄の合金は、ステンレス鋼と呼ばれ、腐食耐性が高く錆びにくい金属として、機械や台所用品などに幅広く使われています。さらに、クロム金属は光沢があり腐食耐性が高いため、メッキとして利用可能です。

また、クロムは人の代謝に関わる必須ミネラルでもあります。特に、脂質代謝を活発にする働きがあるため、コレステロール値や中性脂肪を下げ、動脈硬化や高血圧を予防可能です。そして、インスリンの働きを助ける作用もあり、糖尿病の予防効果があると言われています。 

クロムの性質

クロムは銀白色の硬い金属であり、融点は1,907°Cで、沸点は2,671°Cです。常温では極めて安定です。

塩酸や希硫酸に溶かすと、2価のクロム塩溶液となります。2価の状態は不安定なため、空気中の酸素によって、3価のクロムへと速やかに酸化されます。

クロムの構造

クロムの電子配置は[Ar] 3d5 4s1です。α、β、γの3種類の同素体を持っています。結晶構造は、αが体心立方格子、βが立方最密充填構造、γが六方最密充填構造です。

天然存在比が最も多いクロムの同位体は52Crで、83.789%です。そして、安定同位体 (52Cr、53Cr、54Cr) が存在します。放射性同位体は19種類同定されており、最も安定な50Crの半減期は1.8×1017年以上です。51Crの半減期は27.7日で、それ以外の半減期はすべて24時間以内であり、ほとんどの半減期は1分以下です。

同位体の質量数は、42から67までを取っています。主に52以下の質量数のクロムは電子捕獲により崩壊して、52以上の質量数のクロムはベータ崩壊します。

クロムのその他情報

1. 体内のクロム

人間にとってクロムは、微量必須元素です。体内でインスリンとレセプターの結合を助ける働きをする耐糖因子を構成するための材料です。体内でクロムが不足している場合には、糖代謝の異常が起きて、糖尿病が発症する可能性があります。

クロムを多く含んだ食品の例として、エビ、レバー、キノコ類、豆類、ビール酵母、黒胡椒などが挙げられます。1日のクロムの必要量は、50〜200μgです。

未精製の穀類にも含まれていますが、精製によって大部分のクロムが失われます。小麦粉を精白するとクロムが98%失われ、米を精米するとクロムが92%なくなると報告されています。その上クロムは、体内へ吸収されづらいミネラルです。クロムを体内へ吸収するためのサプリメントなども販売されています。

2. クロムの危険性

単体のクロムや3価のクロムには、毒性がありません。しかし、6価のクロム化合物の毒性は高いです。以前はメッキのために6価のクロムが使われていましたが、土壌汚染などの問題が指摘され、亜鉛メッキのクロメート処理で使用されなくなってきました。

クロムはたばこに含まれている発がん性物質です。4価のクロム化合物には、発癌性があると報告されています。

3. クロムの同位体の応用

53Crは53Mnの崩壊生成物であり、クロムとマンガンの同位体の含有量は関連性があり、同位体地質学で利用可能です。クロムとマンガンの同位体の組成比を考えると、初期の太陽系には26Alや107Pdが存在したことを示しています。小惑星の52Crと53CrやMnとCrの多様な構成比から、天体の形成初期に53Mnが崩壊したことが示唆されます。

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