ニトログリセリン

ニトログリセリンとは

ニトログリセリンの基本情報

図1. ニトログリセリンの基本情報

ニトログリセリンとは、爆薬や狭心症治療薬として使用されている有機化合物です。

ニトロと呼んだ場合には、一般的にニトログリセリンまたはニトログリセリン含有の狭心症剤のことを指します。ただし、ニトログリセリンは硝酸エステルであり、ニトロ化合物ではありません。

ニトログリセリンの原液は、僅かな振動や摩擦により爆発を引き起こしやすいため、取り扱いには注意が必要です。正しく取り扱えば爆発は起こらないですが、取り扱い方法が確立していなかった時代には、爆発事故が多発していました。

ニトログリセリンの使用用途

ニトログリセリンの主な使用用途として、爆薬と医薬品が挙げられます。加熱・振動・摩擦により爆発するため、爆薬としてダイナマイトの原材料に用いることが可能です。ニトログリセリンにニトロセルロースを配合したニトロゲルを6%以上含有するものを、ダイナマイトと呼びます。

ニトログリセリンは、狭心症に対する医薬品としても使用可能です。舌下錠として口腔粘膜から吸収された後に、還元酵素により亜硝酸を遊離して、一酸化窒素に変換されます。この一酸化窒素が血管平滑筋を弛緩し、血管を拡張させます。

ニトログリセリンの性質

ニトログリセリンは、無色または淡黄色の油状液体です。水に溶けにくく、有機溶剤に溶解しやすいです。融点は14°Cで、50-60°Cで分解します。衝撃感度や摩擦感度は高いです。

また、容易に低速爆轟 (英: Low Velocity Detonation) を起こします。衝撃感度が高いため、衝撃が小さくても爆発しやすいです。感度を下げるには、水やアセトンに混ぜるか、ニトロゲル化します。

なお、ニトログリセリンは、示性式がC3H5(ONO2)3の硝酸エステルです。グリセリン (英: glycerineまたはglycerin) 分子の3つのヒドロキシ基を、硝酸とエステル化した構造を持っています。分子量は227.0865g/molで、15°Cでの密度は1.6g/cm3です。

グリセリンの配位構造は3つの炭素原子が四面体形で、3つの窒素原子が平面三角形を取っています。

ニトログリセリンのその他情報

1. ニトログリセリンの合成法

ニトログリセリンの合成

図2. ニトログリセリンの合成

ニトログリセリンは、アスカニオ・ソブレロ (英: Ascanio Sobrero) によって、1847年に初めて合成されました。具体的には、硝酸グリセリンを硝酸エステル化して、ニトログリセリンを得ることが可能です。

2. ニトログリセリンの保管

ニトログリセリンは8°Cで凍結します。14°Cになると融解しますが、一部凍結していると感度も高いです。したがって、液体よりも弱い衝撃で、爆発しやすいです。

ゲル化しているニトログリセリンも、凍結と解凍を繰り返すことで、液体が染み出すため安全ではありません。ダイナマイトとして加工した場合にも、凍結を避ける必要があります。気温によって溶けたり凍結したりしないように、保管時の温度管理が重要です。

3. ニトログリセリンの使い方

ニトログリセリンを融解するためには、湯煎して間接的に熱します。瓶の縁に空気を残さないように気をつけ、かき混ぜないようにします。

ゲル化しているニトログリセリンでは問題ありませんが、ゲル化中にわずかに気泡が入ると爆発する可能性があるため、加工にも注意しなくてはいけません。

4. ニトログリセリンの関連化合物

グリセリンの基本情報

図3. グリセリンの基本情報

ニトログリセリンは、グリセリンの硝酸エステルです。グリセリンは甘味がある、無色透明の糖蜜状液体です。

保存料や甘味料だけでなく、保湿剤や増粘安定剤など、食品添加物としての用途があります。そのほか、化粧品や医薬品としても使用されています。

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