亜鉛とは
亜鉛 (原子番号30、化学記号Zn) とは、光沢のある銀白色を帯び、密度が高くて融点が低い材料です。
亜鉛は空気中で酸化されると表面に酸化皮膜を形成します。他の金属を保護するために、めっき材料として使われることがあります。これは亜鉛が他の金属よりも優先的に酸化するためです。
亜鉛めっきは、自動車部品や建築用鋼材などの金属製品の保護や装飾に用いられていたり、また亜鉛が錆びにくいために水道管や屋根材や船舶の防水塗料などにも使われたりします。乾電池や合金の材料としても使われます。
亜鉛の使用用途
亜鉛は電池、鋼材、合金、建築材料、自動車部品、家電製品、医薬品、農業、化粧品など幅広い分野で使用されます。具体的な例は下記の通りです。
- 電池: アルカリ電池やニッケル・亜鉛電池など
- 鋼材: 亜鉛めっき鋼板やガルバリウム鋼板など
- 合金: 亜鉛は真鍮や亜鉛アルミニウム合金、亜鉛ニッケル合金、亜鉛チタン合金など
- 建築材料: 屋根材や外壁材や防水材など
- 自動車部品: ホイールやバッテリーなど
- 家電製品: 冷蔵庫の扉や電子機器の筐体など
- 医薬品: 亜鉛は咳止め薬や皮膚炎の治療薬など
- 農業: 肥料や飼料、土壌改良剤、防虫剤など
- その他: 化粧品やインクや塗料や火薬など
亜鉛の種類
亜鉛には合金を含めて様々な種類があり、以下はその一部です。
- SHG (Special High Grade) 亜鉛
高純度の亜鉛です。電気的に安定しています。 - 亜鉛ニッケル合金
亜鉛とニッケルを含む合金で腐食に対する耐性が高くて導電性があります。 - 亜鉛アルミニウム合金
アルミニウムと亜鉛を含む合金で強度が高いため、軽量化に活用できます。 - 亜鉛チタン合金
チタンと亜鉛を含む合金で耐食性や強度が高い合金です。
亜鉛の性質
1. 耐食性
亜鉛は酸化反応を起こし、表面に酸化被膜を形成し、この酸化被膜は亜鉛を腐食から守ります。亜鉛の耐食性は、酸化被膜の形成とその保護効果によるものです。
酸化反応によって亜鉛の表面に形成される酸化被膜は、一般的に亜鉛酸化物である亜鉛酸化物 (ZnO) が主成分であり、この酸化被膜は、亜鉛の表面を覆う薄い層であり密着性があります。この酸化被膜は亜鉛を保護し、酸素や水分、さらには酸化物や腐食物質の侵入を防ぎます。もし亜鉛の表面が傷ついたり剥がれたりした場合、新たな酸化被膜が再生されて亜鉛を腐食から守り続けます。
また亜鉛は他の多くの金属よりも腐食が早く進行する性質を持つため、亜鉛めっきや亜鉛合金を他の金属の表面に施すことで、亜鉛が優先的に酸化され、基材の腐食を防げることが特徴です (犠牲防食) 。
2. 電気伝導性
亜鉛の原子構造により電子が自由に移動できるため、亜鉛は電気伝導性が高い金属です。亜鉛は電気の導体としての役割だけでなく、電気化学的な反応や電気分解の過程においても重要です。電解めっきなどの応用では、亜鉛が陽極として使用され、金属のめっきや保護被膜の形成に役立っています。
3. 磁気特性
亜鉛の結晶構造が磁場に対して強く反応しないため、純粋な亜鉛は磁気特性が非常に弱い金属です。しかし亜鉛合金では、亜鉛以外の金属の結晶構造や電子配置によって磁性を示すようになることがあります。
例えば、亜鉛と鉄を組み合わせた亜鉛鉄合金は磁性を持つ金属です。亜鉛と鉄の結晶構造や電子配置が互いに影響しあい、合金全体に磁気特性が現れます。このような亜鉛合金は、磁気応用や磁性材料として使用されることがあります。
4. 融点
亜鉛の融点は約419.5℃であり、比較的高い融点を持っています。この高い融点は、亜鉛の原子構造と結合の強さによるものです。亜鉛は密に詰まった結晶構造を持つ金属であり、原子同士は強い金属結合によって結ばれているため、亜鉛の融点は比較的高くなります。
亜鉛の融点が高いため、亜鉛は比較的高い温度まで加熱されても、その結晶構造が安定な状態を保ちます。よって亜鉛は高温処理や高温環境下での使用に適しています。
5. 可鍛性と展性
亜鉛は、「可鍛性(鍛造性)」と「展性」を持つ金属です。
可鍛性 (鍛造性)
亜鉛の可鍛性は、高温における結晶構造の変化によるものです。加熱によって亜鉛の結晶が拡散し、結晶粒が成長すると、亜鉛は柔らかくなり、鍛造で容易に形状を変更できます。鍛造は、熱い金属を圧力の下で形状を変える加工方法です。亜鉛は高温で鍛造されることが一般的であり、加熱によって可塑性が増すため、容易に鍛造できます。
展性
亜鉛は加熱されると結晶が拡散し、結晶のスライドと滑りが促進されるため、亜鉛は引っ張りや圧縮といった応力を受けると容易に変形できます。亜鉛の展性は、圧延に適しています。
亜鉛のその他情報
亜鉛めっきの経年劣化
亜鉛めっきは金属表面を保護する効果がありますが、時間が経過するにつれて効果が低下することがあります。特に摩擦や腐食などによって表面層が剥がれると、下層の金属表面が露出して錆びや腐食が進行することがあります。
亜鉛めっきは金属表面を保護するための効果があるものの、劣化や腐食が進行する可能性があるため、適切なメンテナンスが必要です。