KVMスイッチとは
KVMスイッチとは、1組のキーボード(Keyboard)・ディスプレイ(Video/VisualUnit)・マウス(Mouse)で複数台のコンピュータを操作するためのハードウェアです。それぞれの頭文字を取ってKVMスイッチと呼びます。CPU切替器やPC切替器という名称でも呼ばれることもあります。
基本的には1組のKVMから複数台のコンピュータを制御しますが、複数台のKVMで1台のコンピュータを制御できる製品もあります。多機能なKVMスイッチでは、USBデバイスやスピーカーの共有機能も備えています。また、コンピュータのみではなく、データサーバに対して使用することも可能です。
KVMスイッチの使用用途
KVMスイッチは家庭でも使用可能ですが、産業・商業用に利用されるケースがほとんどです。以下に使用例を列挙します。
- 多数のサーバーが稼働しているデータセンター
- 複数台のPCを使用している工場・オフィス・研究所
- PC本体へのアクセスが困難な構造・レイアウトのある工場
広大な敷地での使用や、複数台のPCを設置する場所で使用されます。
KVMスイッチの原理
KVMスイッチは各機器からのケーブルをKVMスイッチに接続し、USBとVGAを組み合わせた専用ケーブルでコンピュータへ出力します。
KVMスイッチには受動型と能動型があり、それぞれ原理が異なります。PCやOSの特性によってKVMスイッチとの相性もあるため、適切なKVMスイッチを選定する必要があります。
1. 受動型KVMスイッチ
受動型KVMスイッチは機械式KVMスイッチとも呼ばれ、物理的に電気回路を切り替える仕組みです。セレクトスイッチや押ボタンによってPCの切替を行います。
構造が簡便で安価な反面、PCを接続可能台数は多くて12台が上限となります。また、選択外のPCからは物理的にインターフェイス機器が切り離されたように感知するため、PCやOSによっては起動に失敗したりマウスレス状態で起動する場合があります。
2. 能動型KVMスイッチ
能動KVMスイッチは電子式KVMスイッチとも呼ばれ、模擬信号で周辺機器を切り替えています。機械式KVMスイッチとは異なり、選択外PCに対してもインターフェイス機器が接続されたようにエミュレーションします。これにより、選択外PCの起動失敗を防止します。
能動的KVMスイッチは、継続的にインターフェイス機器の接続状態を監視するPCやOSにも有効に働きます。PC切り替えは特定のキーを素早く押下することによって切り替え可能です。KVMスイッチ本体に触れる必要がないため、利便性にも優れます。
KVMスイッチの遠距離通信
KVMスイッチには長距離から操作可能な「リモートKVM機器」があります。リモートKVMには制御方式によってアナログKVM、デジタルKVMというタイプが存在します。
1. アナログKVM
最大300m程度の距離での操作を想定したKVMスイッチです。接続にはLANケーブルを使用しますが、通信プロトコルは製品独自のものであるため他のLAN機器に接続することはできません。
独自プロトコルで制御するため、通信遅延時間があまり発生しないのが特徴です。256台以上のアクセスポイントを設定することが可能であり、8,000台以上のPCを制御できます。
2. デジタルKVM
KVM Over IPとも呼ばれ、インターネット上でイーサネット通信によって信号を送受信できます。インターネットを使用するためにわずかな操作遅延が発生しますが、アナログKVMよりもさらに長距離操作が可能です。その特性から、リモートワークなどにも活用されます。
多くのデジタルKVMはブラウザや専用ビューアソフトによってPCを遠隔操作します。インターネット上でPCを遠隔操作できるリモートソフトには、VNCやターミナルサービスなどがあります。デジタルKVMスイッチはそれらと比較して、リモートソフトウェアのインストールが不要なのが利点です。