瞬間冷凍機とは
瞬間冷凍機とは、魚や肉などの生鮮食料品や加工食品、調理済み食品を短い時間で冷凍して管理するための業務用急速冷凍庫の一種です。
急速冷凍庫の中でも、非常に短い時間で食品を凍らせ、冷凍に伴う味の劣化が少ない冷凍庫のことを瞬間冷凍機と言います。魚や肉などの食品を冷凍すると、味が落ちることがあります。これは-1℃から-5℃の範囲で、食品の細胞中にある水分が氷に変化し結晶化する過程で体積が大きくなり内部から細胞壁を破壊するためだと言われています。冷凍した肉や魚を解凍した際に流れでるドリップの中には破壊された細胞の中にあったうまみ成分が混ざっていると言われています。
瞬間冷凍庫では、強力な冷凍方法で保存食品がこの温度範囲に留まっている時間を短くしたり、細胞が破壊されにくくする方法でさらに低い温度にすることで、食品の味を落とさずに鮮度を長持ちさせます。
瞬間冷凍は、SDGsのフードロス対策としても注目されています。また、新型コロナウィルスの流行によって客足が減った飲食店では、店の料理を冷凍してインターネットで販売する販路拡大のツールとしても注目されています。
瞬間冷凍機の使用用途
業務用の急速冷凍庫はかなり以前から実用化されていますが、魚や肉を鮮度を保ったまま運ぶための必須の設備や冷凍食品工場など大規模な生産現場で使われる設備が中心でした。瞬間冷凍機もこのような需要で使われることもありますが、レストランや給食センター、食料品店などの相対的に規模が小さなビジネスでの活用に注目が集まっています。
SDGsの食品に関する取り組みには、世界の飢餓をゼロにするという目標があります。食品に恵まれている日本では、食品を無駄に廃棄することを止めて必要な食材を使い切る取り組みが始まっています。瞬間冷凍庫はフードロスを減らす道具の1つとして考えられています。
新型コロナウイルスの影響により多くの人々が外食を減らし家庭での食事に切り替えました。瞬間冷凍機を使うと店で出していた料理を冷凍し、宅配便を使って全国の家庭に届けることが可能になるため売上拡大のチャンスが出てきます。また、完成した料理を届けられることは、個別で調理していた施設の給食などを1か所で調理し届けられるようになり、フードロスの低減、調理の際のエネルギーロスの低減、事業の合理化などが期待できます。
瞬間冷凍機の原理
食品の細胞が破壊されやすい-1℃から-5℃の温度範囲を、最大氷結晶生成温度帯と言います。瞬間冷凍機は、極めて短い時間でこの温度帯を越えてさらに低い温度にすることで食品に与えるダメージを小さくしています。冷凍の方法には、空冷タイプ、液冷タイプ、液化ガスタイプ、電磁波併用タイプなどがあります。
1. 空冷タイプ
空冷タイプは食品に-30℃から-40℃の冷気を当てて凍らせます。瞬間冷凍機の中では、比較的コンパクトな装置です。冷気によって食品の表面が乾燥する弱点がありましたが、多方面から冷気を吹き当てることで、この問題を解決した装置も実用化されました。
2. 液冷タイプ
液冷タイプは、食品を-30℃以下に冷やしたアルコールに浸けて、凍らせます。液体は気体よりも熱伝導率が高いので、素早く食品を凍らせることが可能です。その一方で、食品をビニールなどでパックしてから液に浸けなければなりません。
3. 液化ガスタイプ
液化ガスタイプは、融点が-193℃の液体窒素ガスを食品に吹きかけて凍らせます。極低温で素早く食品を凍らせますが、液体窒素の保存と供給設備が必要となります。主に、冷凍食品を大量生産する工場などで使われます。
4. 電磁波併用タイプ
電磁波併用タイプでは、冷凍庫内に強力な静電磁場を付加し、細胞を活性化させ、細胞の破壊や酸化を長時間抑制する装置です。電磁場を発生させる装置や、電磁波が外に漏れないようにする設備が必要でコストが高くつくのが欠点です。
瞬間冷凍機の選び方
瞬間冷凍機には様々な種類があり、それぞれに長所と短所があります。瞬間冷凍機を導入すると、初期コストとランニングコストがかかります。
瞬間冷凍機を使いこなすことで、飲食店や食料品店には新たなビジネスの展開が期待できます。導入にあたっては、かかるリスクを考慮した上で、確実に利益を上乗せできる戦略を綿密に立案し、自社の事業形態にあった機種を選択する必要があります。