インラインX線検査装置とは
インラインX線検査装置とは、工場の製造ラインにおいて流れを止めることなく、X線を用いて製品を検査する装置のことです。
X線は可視光と同じ電磁波の仲間であり広義の光ですが、可視領域の光や、紫外線と比較して光子一つが持つエネルギーが高く、物質の中を通過する力があります。X線はレントゲンにも使われており、物に当てると通常の光では表面しか見えない物質であっても中の状態を観察することができます。
この性質を使って工場のラインを流れる製品や部品に品質上の問題がないかを検査しています。検査はX線を検査対象物に照射して、透過してくるX線をカメラやセンサで捉えてコンピュータで画像化し、人間が目視で判断します。また、人間の目に頼らず、画像をコンピュータ上の検査アルゴリズムにかけて自動で判断する自動検査機も数多く開発されています。
なお、可視光ではモノの表面しか観察できないのに対して、X線やY線を使って、その物を壊したり分解したりすることなく中の状態を観察することを非破壊検査とも言います。
インラインX線検査装置の使用用途
インラインX線検査装置は製造業をはじめ、水産加工業、農業などのラインで使用されています。物の流れを止めることなく全数検査を実施し、不良品だけを選別したい場合に特に有効です。
電子機器メーカーの工場では、部品が実装されたプリント基板のはんだ接合不良を検査するためにX線を使ったCT (英: Computed Tomography ;コンピュータ断層撮影) 検査装置を使用しています。通常の光では見ることができない、はんだ付け部分の内部の状態を知ることができ、より高感度にはんだ接合不良を発見することができます。
水産加工業では、魚の切り身に骨が残っていないか、ガラスや金属などの異物が混入していないかを検査しています。
農業用では、ライン上を流れて来るピーマンに対してX線を使ってその肉厚を測り、大きさの情報と併せて、瞬時にピーマンのランク分けをする装置が開発されています。
インラインX線検査装置の原理
X線は波長が0.1nm~10nm付近の光です。可視光線は波長が下限の360-400 nmから上限の760-830 nmとされているため、可視光線の方が約1000倍の波長を持っています。
波長 (λ) とエネルギー (E) の関係式は E=hν=hc/λh (h:プランク乗数、ν: 振動数、c: 光の速度) で表されるため、エネルギーは波長に反比例します。従ってX線は可視光線の約1,000倍のエネルギーを持っています。
産業や医療で使用されるX線は、X線管などで人工的に作られます。X線管は真空管であり、中にフィラメントとタングステンのような重金属が対峙して配置されています。フィラメントに電流を流して発光させると共に、タングステン側をプラス電位、フィラメント側をマイナス電位に高電圧をかけると、フィラメントから熱電子が飛び出してタングステンに衝突します。電子はそこで急速にスピードを失い、持っていた運動エネルギーをX線の形で放出します。
インラインX線検査装置はこのようにして作ったX線を、ライン上に流れて来る検査対象物に照射し、X線の透過光をX線カメラやセンサで捉えて画像化します。X線は全ての光子が全ての物質を通過できるものではなく、同じ厚みであれば密度が高い物質ほど途中で阻止される割合が多くなり、密度が同じならば厚みが大きいほど、途中で阻止される割合が多くなります。
インラインX線検査装置の種類
インラインX線検査装置では、画像の取得方法と画像の解析方法に大きな進展があります。
画像の取得方法では、一方向からX線を照射して、反対側でその光をセンサーやカメラで捉える方式が基本です。CT方式を採用した検査機では、医療現場のCTと同様に照射角度と、センサーの位置を変えながら、立体的に対象物を観察する装置があります。
画像の解析方法では、人間の目による判定から、検査アルゴリズムを使ったコンピューターによる診断が普及してきて、検査のスループットが向上し、検査時の不良品見落としの危険性が減少しました。
その他には、空港の手荷物検査装置と同様に、複数の波長のX線を照射して、X線のエネルギーの違いによる物質の透過率の違いから、検査対象物の中に混入している異物の種類を特定できる装置などが実用化されています。
X線検査装置のその他情報
X線を使った検査の最初の実用例
X線を使った検査の最初の実用例が、レントゲンです。レントゲンは人体にX線を照射して、透過光のイメージをネガフィルムに記録します。レントゲンでは、人体中で最も密度の高い骨が、最も白く映ります。
インラインX線検査装置はレントゲンの原理を発展させた、製造ラインなどに組み込んで製品の検査に使用する装置です。