X線回折装置とは
X線回折装置とは、物質にX線を照射する際に生じる回折現象を計測する装置のことです。
計測によって得られた回折パターンを解析することで、対象物質の結晶構造に関する情報を得られます。X線回折装置は、X線を発生させるX線発生装置、回折角を計測するゴニオメーター、X線強度を計測する検出器などで構成されています。
X線回折装置は、単結晶や粉末、薄膜などの結晶性を有する物質の測定に使用されることが多いです。有機材料をはじめ、無機材料、合金、タンパク質など様々な材料の研究開発や分析に活用されています。
X線回折装置の使用用途
X線回折装置は、試料にX線を照射することで発生する回折現象を測定する際に使用されます。得られた回折パターンを解析することで、試料の結晶性や配向性、格子欠陥などの評価が可能です。
また、回折パターンは物質の結晶構造ごとに異なるため、既知の物質の回折パターンと比較することで、未知試料の同定や定性分析にも用いられています。X線回折装置は、アモルファス (非晶質) など結晶性のない物質の測定には不向きですが、結晶性を有する粉末や薄膜、合金など様々な物質を測定することができます。
X線回折装置の原理
図1. ブラッグの回折条件
物質に照射されたX線は物質中の電子によって散乱されます。結晶など原子がある程度規則性をもって配列した物質の場合、散乱されたX線は互いに干渉し増幅または減衰し、ある特定の方向のみ散乱強度が大きくなります。これがX線の回折です。
X線の回折では、ブラッグの式 2d sinθ = nλ (d: 格子面間隔 θ: ブラッグ角 n: 整数 λ: 照射したX線の波長) が成り立つときX線の散乱強度が大きくなることが知られています。つまり、測定に用いる波長λを固定すれば、様々な回折角2θ (入射したX線と回折したX線のなす角) に対して、格子面間隔dをそれぞれ求めることが可能です。このようにして、測定した回折パターンから測定物質の原子配列を明らかにしていきます。
X線回折装置の種類
主なX線回折装置として、粉末X線回折装置、単結晶X線回折装置、薄膜X線回折装置が挙げられます。これらは、X線の照射や検出の仕方によって分類されます。
1. 単結晶X線回折装置 (SC-XRD)
図2. 単結晶X線回折装置
結晶をある軸について回転させながらX線を照射し、回折パターンを2次元画像として測定する方法です。得られた二次元の回折パターンを専用ソフトウェアによって計算することで、結晶構造の三次元モデルを求められます。
2. 粉末X線回折装置 (PXRD)
図3. 粉末X線回折装置
照射するX線の入射角や検出器の位置などを動かして測定する方法で、回折角2θに対する回折強度がデータとして得られます。回折パターンが既知の物質の同定や定性分析に主に利用されます。用いる試料の量が少なくて済み、試料の調整が容易であることから、もっともよく利用されている測定方法です。
3. 薄膜X線回折装置 (GI-XRD)
照射するX線の入射角を基板表面にほとんど平行になるように固定し、検出器を動かすことで測定する方法です。基板表面と平行な方向に検出器を動かすIn-Plane測定も行えます。基板の影響が比較的小さく、表面に近い部分の情報が得られるため、薄膜や界面の結晶構造の同定や定性分析に主に利用されます。
それぞれ異なる特徴がありますので、使用目的や測定試料に応じて使い分ける必要があります。また、使用目的によっては、類似の測定装置であるX線散乱装置を用いる方がよい場合もあります。他にも、付属装置等を用いることで、光源の種類を変更したり、温度や圧力などの測定環境を変化させながら測定したりすることも可能です。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/58/2/58_KJ00007515751/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikizai1937/78/12/78_583/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/adhesion/44/5/44_5-5/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kogyobutsurikagaku/58/11/58_1003/_pdf