スピンカシメ機

スピンカシメ機とは

スピンカシメ機とは、2枚の金属板をリベットで接合する作業などにおいて、治具 (インサート) を高速で回転させながらリベットの頭部に押し付けてリベット留めを行う機械です。

平らな金属板に、ある程度の大きさの力を加えると変形します。加える力が小さい場合は、力を加えるのを止めると、板は元の平らな状態に戻ります。

しかし、さらに大きな力を加えると金属板は大きく変形し、元の平らな状態には戻らなくなります。このように力を加えることを止めても、材料が元の形に戻らなくなることを塑性変形と言います。

塑性変形を利用して、材料の形を変える方法をカシメと言います。2枚の板をリベットを使って接合する場合、2枚の板に開けられた接合用の穴にリベットを通し、板の上に出てきたリベットの頭部に治具を押し付けて塑性変形させて潰すことでリベットは抜けなくなり、2枚の板は強く接合します。スピンカシメ機はリベッティングマシンとも言われます。

スピンカシメ機の使用用途

スピンカシメ機は、主にカシメによるリベット留めの作業に用いられるほか、数cmφほどの範囲のカシメ加工にも使用します。リベットがアルミニウムのような柔らかい金属でできている場合は、硬い治具をリベットの頭部に当てて強い力を加えると、リベットの頭部がつぶれてリベット留めが完了します。

しかし、リベットが鉄のような硬い金属でできている場合には、数kN程度の力を加えても変形が起こりません。この場合は、治具を高速で回転させながら力を加えることでリベットの頭部を塑性変形させることができます。リベットを使った接合部は、ボルトやネジのように振動によって緩む心配がないので、金属の接合において広く利用されています。

スピンカシメ機を使って製造した部品が使われている具体例としては、繰り返し強い力がかかる鉄道車両のブレーキ部、高温にさらされ続ける水蒸気タービンのブレード取り付け部など、厳しい条件にさらされる機械部品などがあります。また、自動車の多くの部品や、ノートPCのヒンジ部、ハサミの接合部など、身近な製品にも広く使われています。

スピンカシメ機の原理

スピンカシメ機では、断面が~数十mmφほどの金属の治具を、リベットの頭部に押し付けて、頭部を塑性変形させます。この治具のことをインサートと言います。

その際、インサートを高速で回転させながら力を加えてゆくと、回転をさせないで力を加えた場合と比較して、同じ力でより硬いリベットを塑性変形できることが知られています。言い方を変えると、同じ硬さのリベットをより小さな力で塑性変形させることが可能です。この特性により、スピンカシメ機は小さな部品の加工にも適した機械です。

また、インサートを回転させないでリベットの頭部を塑性変形させる際には、インサートの先端部は平らな面になっており、変形されたリベットの頭部も平らになります。

一方、インサートを回転させながら押し付けることで、リベットの頭部を、単に平らにするだけではなく、球形や円錐形、おわん型などさまざまな形に仕上げることが可能になります。その際には、インサートを回転軸の中心から垂直に押し当てるだけではなく、アタッチメントを変えて、回転軸からずらした位置からリベットの頭部に向けて傾けて設置します。そのことで、リベットの頭部に対して斜め方向から力を加えることになります。

また、インサートの先端部は、それぞれの形状に合わせた形のものを使用します。スピンカシメ機は、リベットを塑性変形させながらも、金属版とリベット頭部との間に隙間を残すことができます。このことで、ハサミやノートPCのヒンジ部のように、接合部が回転可能な部品を作ることができます。

このような特徴と相まって、インサートを回転させることで、より高精度な加工ができることが知られており、リベット留めや、材料の部分的なカシメにはスピンカシメ機が多く使われています。

スピンカシメ機の選び方

加工するリベットの材質と大きさによって求められる力の大きさが異なります。スピンカシメ機の選択に当たっては、どれくらいの力が必要かを検討します。

どれくらいの直径のリベットまで加工できるかは、最大リベットサイズ (適合リベットサイズ) として直径の大きさで表されます。

スピンカシメ機には、圧縮空気で動く空圧機、電動で動く電動機、油圧で動く油圧機があります。加圧できる大きさは、油圧機が一番大きく、次に電動機、そして空圧機となります。小型の電動機は、空圧機と加圧力の範囲が概ね同じになります。しかし、空圧機には、静粛性に優れている利点があります。

作業性を考える際には、制御装置のインターフェースや、XYステージとの組み合わせを、検討します。さらに、自動化を検討する場合には、ロボットやローダーアンローダーなどと協調運転できるかを検討します。

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