スレッドミルとは
スレッドミルとは、従来のタップを使用したねじ切り工具に代わる新しい切削工具のことです。
タップによるねじ切りでは、あらかじめ適切なサイズの下穴をドリルで開けてから加工が必要になりますが、スレッドミルはそのような下穴が不要です。一本の工具で穴あけとねじ切りを同時に行うことができます。そのため、工具交換時間を大幅に短縮することが可能となります。
さらに、スレッドミルはタップと比較して切りくずが詰まるリスクが低く、そのため詰まりが原因で折れるリスクも軽減されます。仮に工具が折れてしまっても、穴に詰まることがないため、折れた後の除去作業も容易です。
これらの特徴から、スレッドミルは効率的なねじ切り加工を実現する画期的な工具と言えます。従来のタップに比べて、短縮された工具交換時間や折れるリスクの低減など、さまざまなメリットがあり、現在注目されている工具の1つです。
スレッドミルの使用用途
スレッドミルは、タップと同様に工作物のねじ切り加工に使われます。しかし、スレッドミルは超硬工具であるため、タップよりも硬い材料 (工具鋼や焼き入れ鋼) でもねじ切り加工が可能です。この特徴は、さまざまな材料を加工する際に役立ちます。
また、スレッドミルはタップに比べて機械にかかる負荷が少ないため、剛性の低い小さなマシニングセンタでも使用可能です。さらに、スレッドミルは左ねじや細目ねじなどの特殊なねじ切り加工にも対応できます。NCプログラムを変更するだけで、一本の工具で様々なねじ切り加工ができるため、専用のタップを複数用意する必要がありません。そのため、コストや工具管理の手間も削減されます。
スレッドミルの原理
スレッドミルは、ヘリカル加工と呼ばれる方法でねじ切りを行っています。タップがあらかじめ開けた穴に対して垂直にねじを切るのに対し、スレッドミルはXYZの3軸を同時に動かし、螺旋を描きながら金属を削ります。ピッチが同じであれば、NCプログラムを変更するだけでさまざまなサイズのねじ切りが可能です。さらに、径補正を変えることで、めねじの精度も簡単に調整できます。
また、スレッドミルには面取り刃が先端についている種類もあり、下穴、タップ、面取りといった工程を一本の工具で集約することが可能です。ただし、スレッドミルにもデメリットが存在します。
タップがZ軸の動きのみで加工するのに対して、スレッドミルはXYZの3軸同時制御で加工を行うため、NCプログラムが複雑になります。そのため、加工時間が長くなってしまい、同じ穴を多く開ける場合には時間がかかりすぎる場合もあるため注意が必要です。
スレッドミルの種類
スレッドミルはねじ切り加工に用いられる優れた工具で、主に「ソリッドカーバイドスレッドミル」「インデックス式スレッドミル」「マルチフォームスレッドミル」3種類が存在します。
1. ソリッドカーバイドスレッドミル
ソリッドカーバイドスレッドミルは、切刃部分が超硬合金 (カーバイド) でできた一体型のスレッドミルです。硬い材料の加工に適しており、高い耐摩耗性と長寿命が特徴です。また、高い剛性を持つため、精密なねじ切り加工にも対応しています。ただし、破損時の交換コストが高いことがデメリットです。
2. インデックス式スレッドミル
インデックス式スレッドミルは、切刃部分が取り替え可能なタイプのスレッドミルです。使用中に切刃が摩耗したり破損したりした場合でも、切刃部分だけを交換すればよいため、コスト面で優れています。また、1つのホルダーに複数の切刃を装着できるため、加工範囲が広がります。
3. マルチフォームスレッドミル
マルチフォームスレッドミルは、1つの工具で複数の異なるピッチや形状のねじ切りが可能なスレッドミルです。そのため、工具の交換を減らせ、加工時間の短縮やコスト削減に貢献します。特殊なねじ切り加工にも対応できるため、幅広い用途で活躍します。
参考文献
https://www.osg.co.jp/products/threadmill/
https://smicut.com/