コバールとは
コバールとは、鉄、ニッケル、コバルトを主成分とする合金で、ホウケイ酸ガラスと同等の熱膨張係数を持つ特殊な金属材料です。
この特性により、ガラスと金属の気密封着に適した材料として、電子部品や真空部品の製造に広く使用されています。
コバールの最大の特徴は、その熱膨張特性にあります。一般的な金属材料と比べて非常に小さい熱膨張係数を持ち、温度変化による寸法変化がガラスと同程度です。このため、ガラスとの接合部に発生する熱応力を最小限に抑えることができ、気密性の高い封着が可能になります。また、優れた加工性と溶接性を持ち、複雑な形状の部品製作にも対応できます。
製造工程では、原料の配合から溶解、圧延、熱処理まで、厳密な管理が必要です。特に、熱処理条件は材料の特性に大きく影響するため、温度と時間の制御が重要です。さらに、表面処理によって酸化膜を形成し、ガラスとの接着性を向上させることもできます。また、高純度の原料を使用し、不純物の混入を防ぐことで、安定した品質を確保しています。
コバールの使用用途
1. 電子部品の製造
半導体パッケージや電子管、センサーなどの電子部品製造に使用されます。特に、ICパッケージのリードフレームやヘッダーなど、ガラスや絶縁材料との接合が必要な部位に広く採用されています。気密性の高い封着により、デバイスの信頼性を確保し、長期間の使用に耐える製品を実現可能です。
2. 真空部品の製作
真空管や真空装置のフィードスルー、真空計測器などの製造に使用されます。真空環境を維持するために必要な気密性を確保し、温度変化による気密性の低下を防ぐことが可能です。また、真空中での使用に適した低ガス放出特性を持ち、高真空装置の性能維持に貢献します。
3. 光学機器の部品
レーザー装置や光通信機器、分光器などの光学機器に使用されます。ガラス製の光学部品との接合部に使用され、温度変化による光軸のズレを防ぐことが可能です。また、精密な位置決めが必要な光学部品の支持材料としても利用されています。