BVHとは
BVHとは、Bounding Volume Hierarchy (バウンディングボリュームヒエラルキー) の略称で、3次元空間内のオブジェクトを効率的に管理・検索するためのデータ構造です。
複雑な3Dモデルや大規模な空間データを階層的に整理し、衝突判定や光線追跡などの処理を高速化します。
BVHは、3次元空間内のオブジェクトを包含する単純な形状 (バウンディングボリューム) で近似し、それらを木構造として階層的に管理します。一般的には、軸に平行な直方体 (AABB:Axis-Aligned Bounding Box) が使用され、各ノードは子ノードのバウンディングボリュームを包含する形で構築されます。この階層構造により、不必要な領域の探索を省略し、計算効率を大幅に向上させることが可能です。
また、BVHはアニメーションデータの保存形式としても使用されます。キャラクターの骨格構造とモーションデータを階層的に記録することで、3Dキャラクターのアニメーション制御を効率的に行うことができます。この形式では、各関節の回転や位置情報が時系列データとして保存され、滑らかな動きの再現が可能です。
BVHの使用用途
1. コンピュータグラフィックスでの活用
3DCGソフトウェアやゲームエンジンにおいて、レンダリング処理の高速化に使用されます。光線追跡法による画像生成では、光線と物体の交差判定を効率的に行うことができ、リアルタイムレンダリングの性能向上に貢献します。
2. 物理シミュレーションの最適化
ゲームや設計ソフトウェアにおける衝突判定処理に活用されます。多数のオブジェクト間の衝突検出を階層的に行うことで、計算コストを大幅に削減できます。特に、リアルタイムシミュレーションでは、動的に変化するオブジェクトの位置関係を効率的に管理し、スムーズな物理演算を実現可能です。
3. モーションキャプチャーデータの管理
人体や動物の動きを記録したモーションキャプチャーデータの保存と再生に使用されます。骨格構造を階層的に表現し、各関節の動きを時系列データとして記録することで、自然な動作の再現が可能です。アニメーションの制作現場では、キャラクターの動きの編集や合成、異なるモデルへの動作の転用など、幅広い用途で活用されています。