熱延鋼板

熱延鋼板とは

熱延鋼板とは、鋼を高温で加熱し、圧延によって薄く延ばして製造された鋼板です。

通常、約1,100℃以上に加熱した鋼スラブを圧延機で連続的に延ばし、所定の厚さに成形して冷却し、最終的に巻き取る工程で作られます。この過程で熱間圧延が行われるため、表面には酸化被膜が形成され、冷延鋼板と比べるとやや粗い仕上がりになりますが、成形性や溶接性に優れており、さまざまな用途に適しています。

熱延鋼板は、その強度と耐久性を持ちながら低コストで生産できるため、建築や機械、造船、橋梁など、多岐にわたる分野で使用されています。製造過程で表面処理や追加加工が施され、冷延鋼板や表面処理鋼板として使われることもあります。熱延鋼板は、製品の基盤となる重要な素材です。

熱延鋼板の使用用途

熱延鋼板の主な使用用途は以下のとおりです。

1. 建築・建設

建築や建設の現場では、熱延鋼板は主に建物の骨組みを構成するH形鋼、鋼管、鉄筋、鋼板などとして利用されます。その高い強度と耐久性を活かし、ビルや橋梁、トンネル、ダムなどの大規模な構造物の建設に欠かせない素材です。また、施工現場での加工が容易で、溶接や曲げ加工を通じて多様な形状に成形できるため、設計の自由度も大きく、さらには防錆処理を施した鋼板は屋根材や外壁材として使用され、建築物の寿命を延ばすことにも貢献しています。

2. 自動車

自動車業界においては、シャーシやフレーム、サスペンション部品、ホイールなど、強度と衝撃吸収性が求められる部品に熱延鋼板が使用されます。特に、大型車両や商用車のボディ部品では、その耐久性の高さが重視されます。近年では自動車の軽量化が進んでおり、高強度の熱延鋼板を使用することで車両の重量を減らしながらも、安全性を確保する技術が進展しています。さらに、電気自動車の設計にも適用されるなど、自動車業界における重要性は増しています。

3. 産業機械および重機

熱延鋼板は、産業機械や建設機械の製造にも広く使用されています。ブルドーザーやクレーン、フォークリフトなどの車体フレームやアーム部分には、過酷な条件下でも高い耐久性を発揮する熱延鋼板が適用されます。また、プレス機や製造ラインの機械部品にも使用され、加工しやすく、強度のバランスに優れた素材として採用されています。特に、高強度鋼板を使用することで機械の軽量化と耐久性の向上が同時に実現されています。

4. 造船および海洋構造物

船舶や海洋構造物には、熱延鋼板が広く使用されています。特に、タンカーやコンテナ船の船体、甲板、内部構造部分に熱延鋼板が使用され、その耐食性や耐久性が重要視されます。厳しい海洋環境でも長期間使用に耐えるように、適切な表面処理が施されることが多いです。また、海洋プラットフォームや港湾施設の建設にも利用され、波や風による影響に強い素材として活躍しています。

5. 鋼管・配管材

熱延鋼板は、鋼管や配管材としても多く使用されています。石油やガスの輸送用パイプライン、建築設備用の配管、産業用ダクトなどに利用されます。特に、高圧や高温環境で使用される配管では、一定の厚みと強度を持つ熱延鋼板が適しています。工場のプラント設備や発電所など、インフラ分野でも活躍しており、ガス管や水道管などの生活インフラにも使用され、安全性と耐久性の確保に貢献しています。

参考文献
https://www.nipponsteel.com/product/catalog_download/pdf/U001.pdf
https://www.nipponsteel.com/product/sheet/list/01.html
https://www.nipponsteel.com/common/secure/company/publications/quarterly-nipponsteel/pdf/2023_17_08-09.pdf