チクソモールディング

チクソモールディングとは

チクソモールディングとは、別名「半溶融射出成形」とも呼ばれ、マグネシウム合金を半溶融状態で金型内に射出成形する技術です。

従来のダイカスト法とは異なり、固相と液相が共存する半溶融状態の材料を用いるため、より精密で高品質な成形品の製造が可能となります。具体的には、マグネシウム合金を半溶融状態まで加熱し、スクリューを用いて高速・高圧で金型内に射出します。半溶融状態の材料はチクソトロピー性を示し、剪断力を受けると粘度が低下する性質を持っているため、複雑な形状の金型にも容易に充填することが可能です。

チクソモールディングは従来のダイカスト法で問題となっていたガス巻き込みによる内部欠陥を大幅に低減できるため、機械的特性に優れた成形品が得られます。また低い温度で成形できるため、金型の寿命が延びるという利点もあります。

チクソモールディングの使用用途

チクソモールディングの使用用途として、自動車分野、電子機器分野、医療機器分野、航空宇宙分野の4つを解説します。

1. 自動車分野

自動車分野においては、軽量化による燃費向上が喫緊の課題となっています。チクソモールディングは高強度・軽量なマグネシウム合金部品を効率的に製造できるため、燃費向上が実現可能です。例えばステアリングホイールの芯金、インストルメントパネルの骨格部品、シートフレームなど、従来鋼板やアルミニウム合金で作られていた部品をマグネシウム合金に置き換えることで、大幅な軽量化を実現できます。また薄肉化も可能なため、部品点数の削減や設計自由度の向上にもつながります。

2. 電子機器分野

スマートフォンやノートパソコンなどの電子機器は小型化・薄型化が進んでおり、筐体には高い強度と剛性が求められます。チクソモールディングで製造されたマグネシウム合金筐体は薄肉でありながら高い強度と剛性を持ち、さらに軽量であるため、こうした条件を満たす素材と言えます。

3. 医療機器分野

医療機器分野では、安全性、信頼性、衛生面が極めて重要です。チクソモールディングで製造されたマグネシウム合金部品は高い生体適合性を持つため、人体に直接触れる機器にも安心して使用できます。例えば手術用器具や人工関節の部品、車椅子のフレームなどに採用されています。

4. 航空宇宙分野

航空宇宙分野では、極限環境での使用に耐えうる高い信頼性と性能が求められます。マグネシウム合金は軽量でありながら高い強度と剛性を持ち、耐熱性にも優れているため、航空機や宇宙船の部品に適した素材です。