監修:九州電力株式会社
ケーブル診断とは
ケーブル診断とは、ケーブルの絶縁性能を診断する技術です。
ケーブルの絶縁性能の低下は、ヒートサイクルや水の侵入、化学物質、製造・運搬・施工時の欠陥など様々な要因によって引き起こされます。
ケーブルの絶縁性能が低下すると最終的に絶縁破壊に至り、これによる突発的な事故停電は甚大な被害を引き起こす可能性があります。
ケーブル診断を実施することで異常を未然に検知し、安定して電力を使用することで継続的な企業活動を維持することができます。
ケーブル診断の使用用途
ケーブルはインフラや工場、商業施設など様々な場所で使用されており、企業活動を安定的に継続するためには欠かせない電力供給設備です。ケーブル診断はケーブルの潜在的な異常を未然に発見するため定期的に実施されています。また、近年では、IoT技術の進展などにより、運用中のケーブルに対し常に診断を実施する常時診断も普及しはじめています。診断結果は予防的にケーブルを更新するためのエビデンスとして活用されます。
ケーブルの製造方法や使用電圧、また水トリーなどの様々な絶縁低下因子に対して有効なケーブル診断方法が異なります。また、診断時の停電可否などの使用者の運用状況に応じて、最適なケーブル診断方法が適用されます。
1. 電力
ケーブル診断は電力ケーブルの劣化や損傷を早期に発見するために実施されます。特に絶縁抵抗測定は簡易的な診断として広く実施されています。
また、絶縁抵抗測定では水トリーなどの故障を発見することが困難です。早期発見のために、重要機器に関しては部分放電試験や直流漏れ電流試験などが一般的に採用されています。このような診断を通じて、安定した設備の維持管理が必要です。
2. 通信
通信業界ではデータ伝送の品質と速度が重要です。光ファイバーなどのケーブルの状態を診断することで、通信の安定性と効率を確保する必要があります。信号減衰やノイズの影響を受けやすいケーブルを迅速に特定し、対処しなければいけません。
時間領域反射率測定はケーブルの障害点を特定するために使用され、損傷や接続不良を検出します。これにより、通信プロバイダーのサービス品質を維持し、顧客の満足度を向上させることが可能です。
3. 製造業
製造業において自動機械やロボットは欠かせない設備です。これらの機械は信頼性を求められるため、ケーブルの状態を定期的に確認する必要があります。目視診断や絶縁抵抗測定及び熱画像診断を実施することで、劣化などをチェックし、故障のリスクを軽減します。
ケーブル診断の原理
ケーブル診断は、ケーブルの絶縁性能を評価する手法で、ケーブルの電気的特性や異常信号などを測定し、過去の測定結果と比較することで、ケーブルが正常に機能することを確認します。
ケーブル診断の種類
ケーブル診断は主に以下のような種類が存在します。
1. 絶縁抵抗測定
絶縁抵抗測定はケーブル絶縁体の抵抗値を評価する基本的な方法です。ケーブルに直流電圧を印加することで流れる電流を計測し抵抗値を求めます。高い絶縁抵抗値は良好な絶縁状態を示し、低い値は異常の可能性を示します。
2. 部分放電法
部分放電測定は、絶縁体内で発生する局所的な放電現象を検出するための手法です。部分放電は絶縁体の劣化や亀裂、空気中の不純物などによって引き起こされることが多く、進行すると絶縁破壊につながる重要な前駆現象です。
充電中のケーブルに対し特定の周波数帯域で発生する放電信号を検出し、その強度や頻度を分析することで劣化状態を評価する診断法です。
3. 直流漏れ電流法
直流高電圧印加時の漏れ電流を測定する停電診断法で、ケーブルの竣工試験や劣化診断として主に高圧ケーブルに適用されています。試験電圧印加による絶縁破壊を避けるため、低い電圧からステップ昇圧方式で測定し、観測される漏れ電流の大きさあるいは、漏れ電流の時間特性の変化及びキック現象から絶縁性能を調べる診断法です。
4. 残留電荷法
主に特別高圧ケーブルに採用され、水トリーが発生しているケーブルに直流電圧成分を印加することにより水トリー周辺に電荷が蓄積し、長時間残留します。これらの電荷は、交流電圧を加えることにより急激に緩和され、この時流れる電流を検出し劣化状況を評価する診断法です。
本記事はケーブル診断を提供する九州電力株式会社様に監修を頂きました。
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