ハンディ3Dスキャナ

 

ハンディ3Dスキャナとは

ハンディ3Dスキャナとは、3次元物体の形状や表面情報を、デジタルデータに変換するための携帯型の装置です。

ハンディ3Dスキャナは小型で、狭い場所でも細かなところまで非接触でスキャンでき、据え置き型の3Dスキャナに比べて汎用性が高いことが特徴です。

高い自由度と使い易さから、工業製品、医療、芸術、エンターテインメントなど多岐にわたる分野で利用され、業務の効率化を始めデータの保存・継承などに活用されています。

ハンディ3Dスキャナを選ぶ際には、スキャンの精度、速度、スキャン範囲など様々な項目を考慮し、使用用途に適した最適なモデルを選ぶことが大切です。

ハンディ3Dスキャナの使用用途

ハンディ3Dスキャナは様々な場面で使用されています。以下はその使用用途の一例です。

1. 工業製品分野

リバースエンジニアリング:製品や部品の形状をスキャンし、解析や再設計などに使用されています。また、設計図がない製品及び古い部品の修復・改良や、他社製品との性能比較などにも役立てられています。

品質管理:製造後の部品をスキャンして、設計通りに製造されているかどうかの確認に使用されています。定期的な外観・品質検査においても、寸法や形状を定量的に測定でき効率化が図れています。

2. 医療分野

義肢や補装具の製作:患者の体の一部をスキャンすることで、高精度で患者にフィットする義肢や補装具を製作できます。

病気の早期発見・手術:脊柱側弯症などの脊椎・脊髄の病気の早期発見に繋げることも可能です。また、整形手術において手術前の皮膚表面や体の形状をスキャンして、手術の計画や治療の記録に役立てられています。

3. 文化財などの保護・芸術分野

文化財や歴史的遺産・彫刻・美術品などの対象物をスキャンし、デジタルデータとして保存できます。

デジタルデータとして保存・活用する技術はデジタルアーカイブと呼ばれており、構造解析・修復作業に使用され、文化財や歴史的遺産などの研究・保護に役立ちます。

デジタルアーカイブは、芸術作品や彫刻のレプリカの作製、博物館で保存している資料などにも利用され、現物の保全、情報公開・閲覧などを可能にします。

4. エンターテインメント

キャラクターや衣装、アイテムなど現実世界のものをスキャンして、AR・VRやメタバース空間、3Dゲームなどに取り込んでいます。

ハンディ3Dスキャナの原理

ハンディ3Dスキャナの基本原理は、物体の表面をスキャンし、3次元座標の集まりである点群データや、CGソフト等での使用を可能にするポリゴンデータに変換することです。

以下に、スキャンの要となる測定原理について記載します。スキャンには、主にレーザー光方式とパターン光投影式があります。

1. レーザー光方式

レーザー光を対象物に照射し形状を測定する方式で、複数の方式があります。

代表的な方式は、交差させたラインレーザーを対象物に照射し、反射光をセンサーで受光し三角測量の原理で距離を測定するものです。高精度で、複雑な形状や比較的小さな物体の測定に適しています。

また、広範囲なスキャンに向いているタイムオブフライト方式もあり、反射光が戻ってくる時間から対象物までの距離を測る方式です。

2. パターン光投影方式

特定のパターンを物体に投影し、カメラでそのパターンの変形を検出して形状を計測します。特に、パターンが格子や縞模様などシンプルな場合は、構造光方式と呼ばれます。

高い精度とスキャン速度が特徴で、大型物体のスキャンに適しています。LEDを使用している為安全性が高くカラー情報が得られることが利点ですが、対象物が黒色や透明、反射する素材の場合はスキャンが難しいです。

ハンディ3Dスキャナの選び方 

ハンディ3Dスキャナを選ぶ際には、使用する用途に適したものを選択することが重要です。下記に考慮すべき主な観点を記載します。

1. スキャン精度及び解像度

スキャンする対象物の要求精度及び解像度に応じて選ぶことが大切です。その際、対象物の素材のスキャン対応性やスキャンの基準位置合わせ方法などにより、精度や価格が変わってきます。

リバースエンジニアリングや品質管理、義肢製作などでは高精度が求められます。

2. スキャン速度

スピードが求められる作業や、大きい対象物や大量にスキャンする場合には、高速なスキャナが望ましいです。スキャン速度だけでなく、精度や解像度のバランスを見極めることも大切になります。

3. スキャン範囲

対象物の大きさを考慮してスキャン範囲を確認しましょう。建築物や大規模な工業製品には、広範囲のスキャンが可能なモデルが必要です。小さいスキャン範囲のつなぎ合わせにすると誤差が生じます。

4. 色情報

ゲーム開発やCG制作、美術品や文化財のデジタルアーカイブなどには、色情報が重要となります。色情報が必要かどうかも検討しましょう。

5. ポータビリティと操作性

作業環境によっては軽量で持ち運びがしやすいかどうか、また操作性を確認することが大切です。

6. 対応ソフトウェア

スキャンデータを処理するためのソフトウェアも重要です。使いやすさや機能性、サポート体制、他のCADや3Dモデリングソフトとの互換性などを確認することが必要です。

7. コスト

コストは、初期の購入費用だけでなく、メンテナンスやサポート費用などのランニングコストを含めて検討が必要です。高精度なハンディ3Dスキャナは高価ですが、用途によっては低価格のコンシューマーモデルでも十分な場合があります。予算に合わせて、必要な機能と性能を満たすスキャナを選びましょう。