低融点はんだ

低融点はんだとは

低融点はんだとは、融点が183℃を下回るはんだです。

低融点はんだは、一般のはんだに比べ融点が低いので、耐熱性が弱い部品がある場合などに使用されます。はんだは、すずと鉛からできており、すずの量で融点が変わり、作業に合わせたはんだを選択します。

特に、すず63%、鉛37%のはんだは、「共晶はんだ」と呼ばれ、183℃で液体から個体に変わります。特長は半溶融状態がないことです。信頼性が高いので、初心者でも容易に扱えます。

低融点はんだは、カドミウム、ビスマス、インジウムなどを加えて、融点を下げたものです。

低融点はんだの使用用途

低融点はんだは、弱耐熱部品の実装に多く使用されます。カメラモジュールなど耐熱性が弱い場合などです。これまで、これらの部品は、従来やに入りはんだを用いた後付けがされていましたが、さらに低温化、自動化のために、低温はんだとレーザー加熱を行うようになっています。

低融点はんだ付けの課題は、融点に合わせた専用のフラックスが必要になることです。また、ビスマスなどを使用するので、車載部品、医療機器、産業機器など信頼性が高い部品への採用には、注意が要ります。シリンジ型ソルダペースト、ハロゲンフリー対応シリンジ型ソルダペーストなどを使うのが最適です。

低融点はんだの原理

1. 融点低下の問題点

プリント基板や金属部品に使用するはんだは、融点が低く、強度が大きいものが必要です。融点が低いと、はんだ付けに必要なエネルギーが小さくなり、またプリント基板の場合、繊細な電子部品に高温にさらさなくても良いからです。融点183℃の共晶はんだが良く使われてきました。これはすずと鉛の合金です。

近年、鉛の有毒性が大きく注目され、2006年にはRoHS指令として、EUで鉛入りはんだが、原則として禁止され、鉛フリーのはんだが利用されるようになっています。鉛の代わりに銀、銅などを使用して鉛を使わず、融点を極力低下させたものです。

鉛が使えないという制約のため、融点が200℃以上に高くなる問題があり、はんだ付けに必要な温度が250℃以上に上がります。これははんだ付けのコスト増になります。

2. 低融点はんだの出現

低融点はんだは、ビスマスやインジウムなどの金属を加えることで、融点を劇的に下げたはんだです。当初低融点はんだは、高価な金属が必要でコストが高いなどの問題で、それほど普及しませんでした。

その後、技術開発が続けられ、コストや強度・耐久性の面で、著しく改善され、融点も180℃より低いものが出現しています。中には、融点が140℃台の低融点はんだは、プロセスの温度が180℃と従来の温度より70℃低くできるので、多くの利点があるものです。プロセスコストの大幅低減、基板や電子部品の信頼性の向上や不良率の低下などがメリットです。

さらに、低融点はんだの利点は、プロセス温度を下げられるので、プリント基板に耐熱性の低い素材が使えることです。フレキシブル基板の素材に、ポリエチレンテレフタレートPETを使い、融点140℃近辺のはんだを採用して、プロセス温度180℃でリフローが可能です。

低融点はんだのその他情報

1. 低融点はんだ付けの利点

低融点はんだ付け材料、FA装置、工法の3つが一体になって初めて量産が可能になります。低融点にすることで、CO2が削減できコストも低減可能です。

低温実装用のはんだは、一例として、すず-ビスマスの合金が使われます。ピーク温度が141℃の共晶組成のはんだや、145℃の低融点仕様のはんだです。

共晶組成のはんだは、従来のすず-鉛はんだよりも低温仕様にして、省エネに貢献し、コスト低減が可能です。また、低融点仕様のはんだは、耐落下性と耐熱疲労性を向上させています。

2. 低融点はんだ付け工法

低融点はんだを用いた基板実装での工法が最近確立され、炊飯器などの製品が出ています。また、耐熱疲労性や耐落下性に優れたはんだ合金による低温リフローはんだ付け工法も出現し、パソコン、カメラモジュール、洗濯機などに採用されています。

3. 低融点はんだ付け用のフラックス

低融点はんだ付けを行う場合は、必ず低融点はんだ用のフラックスの使用が必要です。例えば、従来の220℃よりも80℃低い139℃でのはんだ付けが可能になり、濡れの向上、低温での飛散防止、良好な耐腐食性・絶縁特性が得られます。