フラネオールとは
フラネオール (英: Furaneol) とは、白色~黄色の結晶または粉末です。
フラネオールという名称は、フィルメニッヒ社の商標であり、IUPAC名は、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3-フラノン (英: 4-hydroxy-2,5-dimethylfuran-3-one) と言います。また、別名として、2,5-ジメチル-4-ヒドロキシ-3(2H)-フラノン (英: 4-Hydroxy-2,5-dimethyl-3(2H)-furanone) 、ストロベリーフラノン (英: Strawberry furanone) 、英語の別名としてAlletone、Pineapple ketone、Dimethylhydroxy furanoneとも呼ばれます。
化学式C6H8O3で表され、分子量128.13の有機化合物です。CAS登録番号は3658-77-3です。
フラネオールの使用用途
ストロベリーフラノンの別名の通り、イチゴのような香りを持つ化合物です。産業的には、イチゴなどの香りの食品用香料や香水原料として使われています。
高濃度では悪臭となるため希釈して使用され、0.01%の濃度では、甘く少し焦げたキャラメル、綿菓子のような香ばしい香りです。香りの閾値はとても低く、水1 kg中に0.00004 mgもしくは0.00001〜0.000005 mgの含有でも香りが感じられます。0.10〜1.00 ppmの濃度で、甘いキャラメルやフルーティな味がします。
天然でも、イチゴやパイナップルなど多くの果物に含まれており、ソバやトマトの香り成分としても重要な成分です。
フラネオールの性質
融点は77-79 °C、沸点は216 ℃、常温で固体です。エタノールに溶け、水やクロロホルム、メタノールにはわずかに溶けます。
酸解離定数 (pKa) は8.56です。酸解離定数とは、酸の強さを定量的に表すための指標の1つです。pKa が小さいほど強い酸であることを示します。
フラネオールの種類
フラネオールには、(R)-(+)-フラネオールと(S)-(-)-フラネオールという2つのエナンチオマーがあります。なお、イチゴの香りは、(R)-体に起因します。
フラネオールのその他情報
1. フラネオールの製造法
グルコースの脱水による生成物の1つです。スクロースの脱水により得られるグルコシドから生合成されます。
工業的には、アセトアルデヒドのエチニル化によって2,5-ヘキシンジオールを合成します。次に、2,5-ヘキシンジオールとオゾンを反応させ、還元的処理によりヘキサン-2,5-ジオール-3,4-ジオンへと変換します。
その後、酸性触媒の存在下で環化することでフラネオールを合成することが可能です。もしくは、ラムノースから多段階のバイオプロセスで製造されます。
2. 取り扱い及び保管上の注意
取り扱う場合
混触危険物質である酸化剤との接触は避けます。取り扱いは換気のよい場所、または局所排気がある場所で使用することが大切です。
使用の際には、適切な保護具を着用します。粉塵が飛散しないように注意が必要です。
火災の場合
フラネオールは、液体状態では可燃性です。分解して二酸化炭素や一酸化炭素を発生する恐れがあります。消火には水噴霧や泡消火剤、粉末消火剤、炭酸ガスなどを使用します。
皮膚に付着した場合
皮膚に付着しないよう注意します。使用時は必ず白衣や作業着などの保護衣や保護手袋の着用が必要です。保護衣の袖は決して捲らず、皮膚が暴露しないようにします。
万が一皮膚に付着した場合は、水で洗い流します。衣類に付着した場合は、汚染された衣類をすべて脱いで隔離します。皮膚刺激または発疹が生じた場合は、医師の診断と手当てを受けなければなりません。
眼に入った場合
使用時は必ず保護メガネまたはゴーグルを着用します。万が一眼に入った場合は、水で数分間注意深く洗います。コンタクトを着用している場合で簡単に外せるときは外し、しっかり洗浄します。眼の刺激が続く場合は、医師の診断と手当てを受けなければなりません。
保管する場合
保管する際は、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを充填し、容器を密栓して冷蔵庫 (2〜8℃) で保管します。直射日光を避け、換気がよく、なるべく涼しい場所に保管します。また、酸化剤などの混触危険物質から離すこともポイントです。
参考文献
https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/sds/aldrich/40703
https://pubchem.ncbi.nlm.nih.gov/compound/Furaneol