ヨウ化鉛

ヨウ化鉛とは

ヨウ化鉛 (英: lead (II) iodide) とは、二価の鉛のヨウ化物であり、化学式PbI2であらわされる無機化合物です。

CAS登録番号は、10101-63-0です。価数を明示するために「ヨウ化鉛(II)」と表記されることも多くあります。

人体に対して有害な物質であるため、各種法規制の対象となっている物質です。かつては絵の具などに黄色の顔料として汎用されていましたが、毒性の高さと不安定さから、近年ではあまり使用されなくなっています。

ヨウ化鉛の使用用途

ヨウ化鉛の主な使用用途は、X線やガンマ線などの検出器の材料、太陽電池、写真、金メッキ、青銅光沢仕上げや塗料、顔料、印刷、模造金などです。X線やガンマ線などの検出器の材料として用いられるのは、ヨウ化鉛に紫外線を照射すると光電子を放出する性質があるためです。

特に、ペロブスカイト型太陽電池については、光吸収層を構成する有機無機ハイブリッド型ペロブスカイト化合物の主原料として、メチルアミンヨウ化水素酸塩と反応させて用いられています。

一方で、鉛は、人体に有害であり、メチルアミンヨウ化水素酸塩は、熱分解しやすいという問題があるため、近年では鉛フリーなペロブスカイト型太陽電池の開発も進められています。

ヨウ化鉛の性質

ヨウ化鉛の基本情報

図1. ヨウ化鉛の基本情報

ヨウ化鉛の分子量は461.01、融点は402℃、沸点は872℃であり、常温における外観は、うすい黄色から黄赤色の結晶または粉末の物質です。

密度は6.16g/mLで、引火性は有りません。ヨウ化カリウム溶液に溶解しますが、水には溶けにくく (溶解度0.63g/L) 、エタノールにはほと んど溶けない物質です。

ヨウ化鉛の種類

ヨウ化鉛は、主に研究開発用試薬製品として販売されています。容量の種類には、5g、25g、100g、500g、1kgなどがあり、実験室で取り扱いやすい小容量での提供です。

通常、常温で取り扱い可能な試薬製品として扱われています。空気および湿度に極めて敏感であるため、メーカーによってはグローブボックス内のアルゴン雰囲気下で扱うことが推奨される場合もあります。

ヨウ化鉛のその他情報

1. ヨウ化鉛の合成

ヨウ化鉛の合成

図2. ヨウ化鉛の合成

ヨウ化鉛の製造方法は、二価の鉛の水溶液にヨウ化水素酸もしくはヨウ化カリウムを加える方法や、硝酸鉛(II)とヨウ化カリウムの反応、などが知られています。それ以外には、硫化鉛とヨウ素を反応させる方法があります。

2. ヨウ化鉛の結晶構造

ヨウ化鉛の結晶は明るい黄色の六方晶系結晶です。加熱すると赤褐色となり、冷却すると元に戻る性質があります。

結晶はヨウ化カドミウム型構造をとり、格子定数はa = 4.59Å、c = 6.86Å、Pb−I結合距離は2.79±0.01Åです。また、水にわずかに溶けますが、水溶液は無色です。

3. ヨウ化鉛の化学反応

ヨウ化鉛の化学反応

図3. ヨウ化鉛の化学反応

ヨウ化鉛は、硫化ナトリウムと反応して、硫化鉛とヨウ化ナトリウムを生じます。また、大気中で酸化されやすい物質であり、生成物は酸化鉛とヨウ素です。不燃性ではありますが、加熱により毒性・腐食性のあるガスを生じます。

4. ヨウ化鉛の有害性

ヨウ化鉛は、GHS分類において、発がん性、生殖毒性、特定標的臓器・全身毒性 (単回及び反復ばく露) が認められている物質です。そのため、各種法令による規制の対象となっている物質です。

毒物及び劇物取締法では劇物に指定されており、労働安全衛生法では、 作業環境評価基準、 名称等を表示すべき危険有害物、名称等を通知すべき危険有害物、リスクアセスメントを実施すべき危険有害物に指定されています。また、労働基準法における疾病化学物質であり、PRTR法では第1種指定化学物質に指定されている物質です。使用する場合は、法令を遵守して正しく取り扱うことが必要です。

参考文献
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/10101-63-0.html

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