電子印鑑とは
電子印鑑とは従来の手書きによるサイン、印鑑の押印の代わりに電子データに印鑑を押すためのソフトウェアやツールです。ペーパーレス化が進む中で電子署名が法的に認められるようになってきており、最近では企業間の契約でも電子印鑑による手続きが進められることが増えています。
一方で電子印鑑は決裁者、または決裁者が代理押印を認めた方々以外が押印した可能性や、電子データ自体の改ざんなどが行われるリスクがあります。そのため、実際に運用する際はセキュリティ対策、改ざん対策が必要です。そのような対策の例として、電子印鑑使用時の認証機能や押印した印影の識別情報の記録、タイムスタンプの付与などが挙げられます。電子印鑑で押印した文書を公的に有効なものとするためには、2か月以内のタイムスタンプの付与など正当性を保証する処理が必要です。
電子印鑑の作り方
電子印鑑はwordファイルやpdfファイルなどの文書ファイルそれぞれで作成することが可能で、ファイルの種類によっては特別なソフトウェアを用意することなく電子印鑑を押すことも可能です。
Wordファイル
Microsoft Office Wordに搭載された図形作成ツールを用いることで電子印鑑を作ることが可能です。これは縦長の楕円を作成して塗りつぶしなしにしたあとに中心に押印車の名前を入れる方法です。非常に簡便に作ることが可能な一方で、誰でも作成することができるため、改ざんが容易であったり本人ではなくとも押印できてしまうなど、セキュリティ面の課題が多いため公的な場面で使われることはありません。
PDFファイル
PDF形式のファイルを読み取るAdobe Acrobat Readerには電子印鑑機能が備わっています。「スタンプ」のなかで電子印鑑を選択して、名前、所属部署や役職など必要な情報を入力することで作成することができます。wordファイルでの図形作成ツールによる電子印鑑よりはセキュリティ面は優れていますが、それでも改ざん防止が可能であるか、といった課題はあります。
電子印鑑のセキュリティ
電子印鑑は本人が押したものであるか、偽装されたものではないか、など改ざんや不正利用の面で課題があります。もちろん印鑑を実際に紙に押す場合でも、承認者と同じ印鑑を購入してしまえば偽装は容易ですが、紙に押す印鑑の場合はすでに世の中で認められているものであるため、日常的に使われています。一方で電子印鑑は新たに登場したものであるため、世の中に受け入れられるまではセキュリティ面や改ざん防止などが求められます。
例えば上記のWordファイルの図形ツールで作成した電子印鑑、印鑑をスキャナで読みとった画像ファイルを用いた電子印鑑は改ざんや他者の利用が容易です。そのような誰が押印したのか分からないという状態を防ぐために、電子印鑑に認証機能を搭載させて、一つ一つの押印記録に対して識別情報を保存させる仕組みを用いるという方法があります。認証機能と識別情報をつけることで、いつ、誰が押印したか記録されてなりすましを防ぐことができるほか、コピー防止機能もついているため押印した画像を利用されることもありません。
電子印鑑の改ざん防止
電子印鑑を使用する場合における改ざん対策として、タイムスタンプを活用する方法もあります。電子印鑑を押した際にタイムスタンプも記録される状態にした場合、少なくとも押印時点で電子データが実際に存在したこと、存在した電子データの内容を決裁者が確認して押印したことを証明することが可能となります。
また電子印鑑の有効性を法的に保証する際にもタイムスタンプが必要となるときがあります。例えば電子帳簿保存法において電子データを有効化するには履歴が残らない媒体で電子印鑑を用いる場合、2か月以内のタイムスタンプが必要です。今後もペーパーレス化の流れに伴い電子印鑑の普及が進んでいくかと予想されますが、改ざん防止の観点からも電子印鑑の認証、識別情報、タイムスタンプ機能は必要とされると考えられます。