デジタル粉塵計とは
デジタル粉塵計とは、屋内作業場において空気中の粉塵濃度測定を行うために使用する小型の測定機器です。
具体的には、労働安全衛生法第65条に基づき作業環境測定が義務付けられている物質である土石、岩石、鉱物、金属、炭素が測定の対象となっています。デジタル粉塵計は、単位時間当たりの粉塵カウント数 (cpm) × K値 (質量濃度変換係数: mg/m3/cpm) を計算して、粉塵濃度 (mg/m3) を正確かつ簡単に測定することができます。
K値 (質量濃度変換係数: mg/m3/cpm) とは、粉塵のカウント数を粉塵濃度に変換する係数です。同じ種類の粉塵の散乱光量 (cpm) と濃度 (mg/m3) は直線的に比例することを利用して求められた直線の傾きです。この機器の仕様はJIS Z 8813に規定されており、粉塵の検出方法には、散乱光法、粒子計数法、吸光光度法、凝縮核粒子計数法などがあります。
デジタル粉塵計の使用用途
デジタル粉塵計を用いる場所は、労働安全衛生法施行令の第21条より、土石、岩石、鉱物、金属または炭素の粉塵を著しく発散する屋内作業場が該当します。そのため、金属の溶接、研磨、切削作業であったり、掘削作業が多かったりするような屋内作業場では、粉塵濃度の管理が重要です。
さらに、計測原理によっては、粉塵の種類や形状によって感度が異なる場合があることが知られており、煙やミスト等の全ての浮遊粒子状物質の影響を受けやすい点に留意して測定結果を管理することが求められます。
デジタル粉塵計の原理
デジタル粉塵計に要求される構造や仕様は、JIS Z 8813に規定されています。粉塵の測定には、散乱光法 、粒子計数法、吸光光度法、凝縮核粒子計数法などがあります。
1. 散乱光法
散乱光法は吸引ファンを用いて、空気吸引口から連続的に浮遊粉塵を取り込み、光源として白色光やレーザー光を用いて粉塵に照射します。粉塵から発せられた散乱光の量を連続的に受光部で検知して、その光量を光電変換素子で電気信号に変換します。
この値を単位時間当たりの散乱光量 (cpm: counts per minute ) として扱い、この濃度値にK値 (質量濃度変換係数 ) を掛けた値が粉塵の質量濃度 (mg/m3)です。
2. 粒子計数法
粒子計数法は、極めて清浄な環境の測定に用いられます。細く乱れがない空気の流れを連続的に作り出して浮遊粉塵を取り込み、光源としてレーザー光などの強いビームを照射します。
粉塵1個1個の散乱光を受光部で検知して光電変換素子で電気信号に変換し、この時の散乱光の強さから粒径分布を求め、そのカウント数から単位体積あたりの粒子数 (particle/cm3) とします。この濃度値にK値 (質量濃度変換係数) を掛けた値が粉塵の質量濃度 (mg/m3) です。
3. 吸光光度法
吸光光度法は連続的に浮遊粉塵を取り込み、光源として白色光やレーザ光を用いて粉塵に照射して、粉塵による光の減衰量を光電変換素子で電気信号に変換します。この光の減衰量 (透過率) の対数値に比例する相対濃度を求めて、粉塵濃度 (mg/m3) とします。
4. 凝縮核粒子計数法
凝縮核粒子計数法は、粉塵濃度が低い場合の濃度測定に用います。粉塵を過飽和蒸気雰囲気中で凝縮成長させて、光散乱粒子計数法を適用します。測定値は測定可能な最小粒径以上の総個数濃度なので、粒径情報がないことがデメリットです。
デジタル粉塵計の選び方
1. 測定範囲
測定したい粉塵の種類や濃度に合わせて、粉塵計の測定範囲を確認します。正確な値を測定するためにも測定範囲が適切であることが大切です。まずはデジタル粉塵計をどういった用途に使うか明確にする必要があります。
2. 精度と信頼性の評価
精度と信頼性は、選ぶ際の重要な要素です。高品質なセンサーや正確なデータ処理機能を備えたモデルを探し、信頼性のあるメーカーの製品を検討します。実際に使ったユーザーのレビューがあれば参考にすることが重要です。
3. 使いやすさ
デジタル粉塵計が扱いやすいかどうかを確認します。直感的なインターフェースや使い方の説明がわかりやすいものを選ぶと、日常の使用がスムーズになります。選ぶ前には実際に操作し、使用感を確認することが大切です。
参考文献
https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000360775.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/juoeh/24/4/24_KJ00000832610/_pdf
https://www.eg.aktio.co.jp/product_pdf/P171.pdf
https://kikakurui.com/z8/Z8813-1994-01.html