エチレン

エチレンとは

エチレンとは、2つの炭素が二重結合で結ばれた炭化水素で、もっとも単純な構造を有するアルケンです。

常温の状態では気体として安定している物質ですが、エタンやプロパン、ブタンなどの物質を熱分解したり、石油ナフサをクラッキングしたりすることで工業的に生成することもできます。

エチレンの使用用途

エチレンには、エチレン自体が用いられる用途と、エチレンが有機化合物の合成材料として用いられる用途があります。

1.エチレンをそのまま使う用途

エチレン (ガス) は、植物ホルモンとして様々な生理活性作用が知られています。具体的には、バナナやキウイフルーツの追熟や、ばれいしょの萌芽抑制を目的とした用途です。

果樹やトマトなどの植物生育調整剤として用いられるエテホン液剤の主成分は、2-クロロエチルホスホン酸の水溶液ですが、植物に散布後、分解してエチレンを発生させることで、植物生育調整剤としての効果を発現します。

2.エチレンを合成材料として使う用途

エチレンは単純な構造の炭化水素であること、反応性に富む二重結合を有することから、様々な低分子化合物、高分子化合物の材料として用いられています。

低分子化合物
エチレンの用途

図1. エチレンの用途 (低分子合物)

エチレンから合成される低分子化合物の代表例として、エタノール、エチレンオキシド、アセトアルデヒドが挙げられます。それぞれの具体的な使用用途は以下の通りです。

  • エタノール:化粧品や塗料の原料
  • エチレンオキシド:医療用器具の滅菌材やエチレングリコールなどの原料
  • アセトアルデヒド:魚の防腐剤や酢酸の原料

また、エチレンから合成されるモノマーの塩化ビニルやスチレンは、重合反応によってポリ塩化ビニルやポリスチレンになります。それぞれの具体的な使用用途は以下の通りです。

  • ポリ塩化ビニル:日用品や衣類、水道パイプ
  • ポリスチレン:家電の部品や建材ボード、食器

高分子化合物
エチレンの用途(高分子化合物)

図2. エチレンの用途 (高分子化合物)

エチレンをそのままモノマーとして重合する場合は、ポリエチレンが得られます。ポリエチレンの用途は幅広く、様々な包装材やレジ袋などに用いられています。エチレンと他のモノマーを共重合させて得られる材料も多いです。

例えば、酢酸ビニルとの共重合では、接着剤などに利用されるエチレンビニルアセテート (EVA) が得られ、EVAをけん化すると酸素バリア性の高い食品包装材として用いられるエチレンビニルアルコール (EVOH) となります。

エチレンの物性

エチレンの性質

図3. エチレンの構造

融点が-169℃、沸点が-104℃なので、常温では気体の状態で存在しています。エチレンの比重は0.975と空気 (比重1) に近く、色も無色であることから空気と区別がつきにくいです。

しかし、引火性や発火性を有し、火災によって刺激性、または毒性のガスを発生する可能性があるため、取り扱いには注意が必要です。

また、エチレンは、自然界にも存在しており、野菜や果物から発生していることが分かっています。これは植物ホルモンの1種であり、野菜や果物を成熟させ、その後腐敗させるというエイジングの役割を持っています。

エチレンの製造方法

エチレンは工業的に製造されています。最も主流の方法は、様々な炭化水素を含む石油ナフサと水蒸気を800℃以上の高温で反応させ、生成する水素やエチレン、プロピレン、芳香族化合物などからエチレンを分離するものです。その他、シェールガスに含まれるエタンを熱分解する手法もあります。

参考文献
https://www.env.go.jp/council/10dojo/y104-28/mat03_1-2.pdf
https://01.connect.nissha.com/blog-gassensor-ethylene/

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