光プローブとは
光プローブとは、従来の電解プローブの欠点を克服し、金属素子を持たないセンサ部分を保持した電解プローブのことです。
電気工学効果を用いて、正確な計測と評価を行うことができます。特徴として、電界を乱さない光ファイバの非侵襲性があることや、ノイズを拾わないこと、センサヘッドが小型で、電源を必要としないこと、周波数や位相や強度など測定できる情報が豊富にあること、金属が周囲にあっても干渉が起きないことなどが挙げられます。
光プローブの使用用途
光プローブは、コントローラやオシロスコープ、内視鏡などにも用いられています。また、光学的な手段を用いて調査や分析を目的として、さまざまな情報を測定することが可能です。
測定用途としては、以下に示すものなどが挙げられます。
1. 比吸収率 (SAR) の測定
100kHz以上の周波数の電磁波を人体に曝露した際に、人体が吸収するエネルギー量の尺度を指します。測定は規格に基づいており、人体と等しい電気的特性を持つファントムと呼ばれるものに対して行う必要があります。
スマートフォン等小型無線機を人体の近くで使用すると、人体の特定の部位でエネルギー吸収が起こるのが特徴です。
2. プラズマの測定
荷電粒子を含むガスに強い電界をかけることで発生するプラズマの測定にも使用されます。光プローブで局所的に発生する電場測定が可能になります。
3. 磁気共鳴イメージング (MRI)
電磁界の人体曝露量を測定するために、光プローブが使用されます。非常に強力な磁場の元での測定が求められますが、光プローブを用いることで正確に測定可能です。
他にもEMC設計において、パルス電界や超強電界の測定をしたり、シミュレーションモデルを検証したりする目的で使用します。
光プローブの原理
1. ポッケルス効果
電界プローブは、ポッケルス効果を有するEO結晶をヘッド部分に用いています。ポッケルス効果とは、物質に外部から電圧が印可された際に物質内の分極率が変化することで、物質の屈折率が変化する現象です。
電界が印可されていないとき、EO結晶に入射した光は偏光状態を保ったまま反射します。しかし、電界が印可された状態になるとEO結晶の屈折率が変化するため入射した光の偏光状態が変化して戻ってきます。
偏光状態の光の強度を検光子で測定することで、電界強度に比例した信号が取得可能です。
2. 測定対象電界への影響
電界プローブには、ダイポールアンテナが使用されることがありますが、光プローブでは使用しません。ダイポールアンテナはケーブルの先に2本の直線状の導線を持った構造をしており、金属素子から成ります。そのため、電界プローブからの散乱により電波に撹乱を与えます。
光プローブではダイポールアンテナ等の代わりにセンサ部にクリスタルを使用することで、測定対象電界に影響を与えることなく、測定することができます。
光プローブの構成
先端部分を構成する部品はEO結晶の他に、光ファイバ、フェルール、コリメータレンズ、誘電体反射膜などがあります。
1. EO結晶
EO結晶は、1mm角程度で構成されています。ダイポールアンテナを使用した電界プローブのアンテナ長さが数cm ~ 10数cmであることを考えると、小さい構造であるため微細部位の測定が可能です。
2. 光ファイバ
EO結晶からコリメータレンズとフェルールを介して光ファイバが接続されています。光プローブがノイズによる影響を受けないのは、光ファイバで信号を伝送するためです。
これにより、周波数に依存せず、電圧信号を光信号に変えて長距離伝送を行うことができます。
3. 誘電体反射膜
誘電体反射膜は、EO結晶の先端に取り付けられています。電界計測の際は、光源で生成した直線偏光をEO結晶へ入射し、誘電体反射膜で反射されて戻された光を計測しています。
光プローブから反射された光はフォトダイオードで電気信号に変換し、差動アンプで増幅出力します。出力電気信号は偏光変化に比例します。
スペクトルアナライザ等を使用することで、電界の強度と位相を計算しています。
参考文献
https://wavecrestkk.co.jp/wc/eoprobe/
https://www.seikoh-giken.co.jp/products/pdf/device1_pd004.pdf
https://www.ntt.co.jp/journal/0606/files/jn200606021.pdf