温水暖房

温水暖房とは

温水暖房とは、ボイラー等で作った温水を流した配管を温室内に設置することによって、温室内を暖める設備のことです。

温水暖房では、温水によって暖まった空気が上昇し、温室の屋根面に到達することによって冷やされて重くなり、再び地表面に下降するという循環を繰り返す仕組みで温室内を持続的に暖めています。

温水暖房の使用用途

温水暖房は、主に防風や加湿を必要とする観葉植物・ラン等の高級花弁園芸・高級温室メロン栽培などで幅広く利用されています。反対に、イチゴやトマトといったような、温水暖房の特徴を活かせない農作物には、温水暖房は不向きです。

また、温水暖房は設備費が非常に高いといった特徴があります。そのため、大規模な施設や販売価格の高い温室メロンや花卉などの栽培において、主に利用される傾向がみられます。

温水暖房の特徴

長所

1. 程よい温度と湿度を保てる
温水暖房は、適度な湿度や緩やかな温度変化を保てる点が長所です。温風暖房では、温室内に設置した配管に温水を流すことで、温室の室温が上昇します。そのため、温室内の温度のムラが生じにくく、温室内の農作物の生育を均一に保つことが可能です。

2. 気流が農作物に与える影響が少ない
温水暖房を用いることで、温室内に生じる気流による農作物への影響を抑える効果も期待できます。例えば、温風暖房では強い気流が発生するため、風を好まない農作物を栽培する場合には適しません。

その点、温水暖房により生じる気流は比較的緩やかであるため、風を好まない農作物への影響を最小限に抑えることできます。

3. 余熱量が多い
温水暖房の特徴として、余熱の熱量が多いことが挙げられます。例えば、温水暖房の故障等イレギュラーな事態が起きた場合でも、しばらくの間、温室の室温を維持することが可能です。

また、スイッチを切った後も温度が変わりにくいので、霧の発生が少ないことも長所として挙げられます。

短所

温水暖房の短所としては、初期費用が高いことが挙げられます。温室内の暖房機材には様々な種類のものがありますが、その中でも温水暖房の設備は初期費用が比較的高い傾向にあります。

ただし、他の暖房機材と同じく一度設置すれば長く使うことができるので、初期投資はやむを得ない出費であると捉えることも可能です。

温水暖房の種類

温水暖房の種類としては、使用する燃料によって大きく2種類に区別することができます。

1. 化石燃料を燃料とする温水暖房

温水暖房には、石油等の化石燃料を使用して温水を作るタイプのものがあります。化石燃料を燃料とする短所は、運搬や貯蔵が比較的容易であることや、エネルギー効率が高いことなどです。

しかしながら、化石燃料の価格高騰や二酸化炭素排出量の削減要求等の要因から、現在はバイオマスを燃料とする温水暖房の利用が増加の傾向にあります。

2. バイオマスを燃料とする温水暖房

温水暖房には化石燃料を使用して温水を作るタイプの他に、バイオマスを活用して温水を作るタイプのものがあります。バイオマスとは、再生可能な生物由来の有機性資源のことです。

バイオマスを燃料とする温水暖房を用いることで、温室効果ガスのひとつである二酸化炭素の削減が可能です。温水暖房に使われるバイオマスで代表的なものとしては、木くずなどが挙げられ、効果的に活用することで燃料費の削減につながります。

温水暖房の選び方

農作物の生育適温に応じて温水暖房やその他の暖房機材を使い分けることはもちろん、花粉媒介や天敵資材として昆虫を利用している場合には、その昆虫の活動適温を確認することも大切です。農作物と昆虫それぞれの適温を考慮した上で温水暖房を導入することにより、効果的に温水暖房が機能します。

また、温水暖房は初期費用が高くなるため、栽培する農作物の販売価格や施設の規模に見合っているか、事前にしっかりと検討しておくことが大切です。誤った選定を行なってしまうと、温水暖房のメリットを享受できない場合があります。

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