肛門鏡

肛門鏡とは

肛門鏡とは、肛門や直腸の内部を診察・治療する際に使用される医療器具です。

金属またはプラスチック製で、筒状の形をしており、肛門から挿入して内部の視認性を高めます。肛門鏡を用いることで、肛門および直腸の異常を診断したり、治療を行ったりすることができます。肛門鏡は、肛門疾患 (痔核や裂肛など) の診断に欠かせないツールであり、消化器外科や肛門科で頻繁に使用されます。簡便で安全に操作できることから、外来診察や手術前の確認、術後の経過観察にも使用されています。

肛門鏡の使用用途

肛門鏡の主な使用用途は以下の通りです。

1. 痔核 (いぼ痔) の診断

肛門鏡を使用して、痔核の有無、位置、大きさ、出血の有無を確認します。内痔核 (肛門内にできる痔) の状態を直接観察するため、診断の精度が向上します。

2. 裂肛 (切れ痔) の評価

肛門の裂けた部分を観察し、炎症や感染の有無を確認します。肛門鏡を用いることで、治療方針の決定に役立ちます。

3. 痔瘻 (じろう) の診断

肛門周囲の感染によってできるトンネル状の痔瘻を確認します。肛門鏡を使うことで、瘻孔 (ろうこう) の位置や範囲を詳細に把握できます。

4. 直腸がんやポリープの検査

肛門鏡を用いて直腸内の腫瘍やポリープを確認します。早期発見が重要な直腸がんの診断に役立ちます。

5. 出血の原因の特定

便や肛門からの出血がある場合、肛門鏡で肛門および直腸を観察し、出血部位を特定します。これにより、痔核や裂肛、腫瘍などの原因を見極めることが可能です。

6. 肛門周囲膿瘍の治療

肛門周囲に膿がたまる膿瘍の状態を確認し、切開排膿や治療の際に使用されます。

7. 術後の経過観察

痔核や痔瘻の手術後に、傷口や治療箇所の回復状態を確認するために使用されます。

8. 直腸脱の診断

肛門鏡を使用して、直腸が肛門から脱出している状態 (直腸脱) を確認します。脱出の程度や原因を調べ、治療計画を立てるのに役立ちます。

9. 異物の摘出

肛門や直腸内に誤って挿入された異物を取り除く際、肛門鏡を使用して視界を確保し、安全に摘出を行います。