特殊ばね

監修:株式会社スガワラ

特殊ばねとは

特殊ばねとは、通常の量産型のばねとは異なる形状や材質、機能を持った特殊なばねのことです。

形状面では、JIS規格から外れるばねや自動機で生産できないばねを特殊ばねと呼ぶことが多いです。特定の製品や装置に合わせてカスタマイズされたり、特殊な用途に応じて設計されたりします。また、材質・機能面では、過酷な環境に耐える耐熱・耐食ばねも特殊ばねに含まれます。航空、医療、発電など、精密性が求められる産業分野で活用されていることが多いです。

特殊ばねの使用用途

特殊ばねは、通常の規格品では対応できない特殊形状が必要な場合や、一見規格品と同様の形状でも規格品とは別次元の精密さが必要な場合などで使用されます。例えば、

  • 極端に全長が長い場合
  • 一つのばねのなかでピッチ形状を細かく変える必要がある用途
  • 四角などの特殊形状
  • 純チタンや真鍮など通常とは異なる素材が必要となる用途

などが挙げられます。主な使用分野は下記の通りです。

  • 一般的機械器具・産業機械 (オイルシール、電気抵抗器)
  • 撹拌・送り装置
  • バルブ
  • ガス管
  • 自動車産業 (ドア、シート、エンジンなど)
  • 医療機器 (カテーテル治療に用いるガイドワイヤ用のばねなど)
  • 航空宇宙工学

また、火力・原子力発電機器や、蒸気、ガスタービン発電機など発電用途に使用されるばねは、過酷な環境に耐える耐熱性・耐食性が必要であり、特殊ばねが使用されます。

特殊ばねの原理

1. 概要

特殊ばねは、特定の製品や装置に合わせてカスタマイズされたり、特殊な用途に応じて設計されたりする製品です。ばねの規格には、JIS規格 (日本産業規格) とJSMA規格 (日本ばね工業会規格) があり、これらから外れるばねは特殊ばねと言えます。

また、自動機で生産できないばねを特殊ばねと呼ぶ場合もあります。様々な自動機がありますが、一般的にはD/d (ばね指数) が3~22の範囲、縦横比が0.8~4、有効巻き数3以上、ピッチが0.5D以内、などの条件が一般的に自動機で生産できる汎用的なばねです。巻きピッチが粗い、公差がきついなどのばねは、特殊ばねに分類され、個別に製造されています。

2. 加工

特殊ばねには部分的に自動機を用いて生産される場合と、手加工で生産される場合とがあります。また、自動機では多少のばらつきが出てしまうため、自動機で生じる誤差が許容できない場合にも手加工での生産が行われます。主な加工種類は下記の通りです。

  • 手巻き
  • 旋盤巻き
  • 異形線縦巻きコバ巻き
  • 両絞り、別フック挿入
  • 脱線巻き
  • コイル部の間際での腕曲げ加工

3. 材質

特殊ばねは、基本的に通常のばねと同様の材質の他、その他特殊材質まで含めて様々な材質が使用されます。主な種類には下記のようなものがあります。

  • ステンレス鋼線
  • 硬鋼線
  • ピアノ線
  • オイルテンパー線
  • リン青銅
  • チタン
  • めっき線
  • 洋白
  • 撚線
  • 真鍮
  • アルミ
  • 三価クロメート被膜付鋼線
  • 亜鉛メッキ鋼線

特殊ばねに使用される材質の、主な特性の例は下記のとおりです。

  • 弾性エネルギーが強い
  • 耐疲労性
  • 耐熱、耐寒性
  • 耐食性
  • 電気伝導性が低い
  • 熱膨張性が低い

特殊ばねの種類

特殊ばねは、基本的に個々の用途・製品に合わせて製造されるため、多様なものがあります。主には、

  • 線径が規格品に比べて極端に細い
  • 全長が規格品に比べて極端に長い
  • 線径に対してコイル径が小さい
  • ばね指数が小さい

のような特徴を持つばねである場合が多いです。

また、個々の特殊形状・製品としては、

  • ジョイント部分が特殊なばね
  • 腕の形状やフック形状が特殊なばね
  • 異形線を用いたばね
  • 圧縮ばねの中にフックを設け、引っ張りばねとして使用するばね
  • ぜんまいばね
  • ヒューズのクリップ用板ばね
  • 耐食耐熱超合金皿ばね
  • タービン用板ばね
  • 耐食耐熱超合金コイルばね

などがあります。

その他、真鍮 (柔らかく傷つきやすいため製造が難しい) や、純チタン、銅など、通常とは異なる特殊素材を用いたばねなども特殊ばねに分類されます。

本記事は特殊ばねを製造・販売する株式会社スガワラ様に監修を頂きました。

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