分散剤

分散剤とは

分散剤とは、分散質粒子を分散媒中に均一に分散させ、再凝集せず安定に分散状態を維持させるための薬剤です。

分散剤の種類としては、「界面活性剤型分散剤」と「高分子型分散剤」に大別できます。界面活性剤型分散剤は、親水基と疎水基からなり、親水基の成分によりアニオン系、カチオン系、非イオン系に分類されます。

分散剤の原理

電気二重層と粒子間の相互作用

図1. 電気二重層と粒子間の相互作用

分散剤で起こる分散効果発現は、静電的反発と立体障害反発の2つです。液体中に分散している粒子間には、粒子表面の電荷に由来する静電的反発力と、ファンデアワールス力という凝集力の2つの力が働きます。この2つの力の大小によって、粒子が凝集するか分散するかが決まっているのです。つまり、静電反発力よりファンデアワールス力が大きくなると粒子は凝集し沈降します。

1. 静電的反発

分散媒中の粒子は帯電しており、その外側には反対電荷のイオンが粒子を取り巻くようにして存在しています。この粒子表面の電荷と対イオンからなる層を電気二重層といいます。この電気二重層が分散剤により厚くなることで、粒子間の電気二重層同士での反発力が大きくなり、凝集を抑えることができます。

2. 立体障害反発

高分子型分散剤による保護コロイド効果

図2. 高分子型分散剤による保護コロイド効果

分子量の大きな高分子系の分散剤が粒子表面に吸着することで、保護コロイド層を形成し、粒子同士の凝集を防ぎます。分子数が増えると嵩高い構造になり、嵩高くなると粒子同士が近づきにくくなるので、分散安定化に繋がります。

有機溶剤を分散溶媒として用いる場合、水系に比べて電荷反発の力が弱くなります。そのため立体障害反発による分散が用いられます。高分子系分散剤を選択する場合、分子構造以外にも分子量が重要です。分子量が大きいほど保護コロイド効果が高まりますが、数十万以上になってくると、逆に1分散剤分子が2つ以上の粒子に吸着することで凝集を進行させてしまうため、適切な分子量を選択する必要があります。

分散剤の種類

分散剤の種類と特徴

表1. 分散剤の種類と特徴

分散剤の種類は、界面活性剤型分散剤、高分子型分散剤、無機型分散剤があります。その中でさらにアニオン系、カチオン系、非イオンに分類されます。

分散剤の選び方

分散剤の選び方は分散質、分散媒、分散濃度によりますが、水に分散させる場合は以下の3点がポイントになります。

  • 水によく溶けて、分散させる分散質に吸着しやすい分散剤を選択する。
  • 粒子径が小さくなるほど、凝集力が高くなり分散しにくくなるため、界面エネルギーを低下させる濡れ性の良い界面活性剤型を併用する。
  • 分散濃度が高い場合、立体障害反発効果が期待できる高分子型が有効である。

分散剤のその他情報

分散剤の分散以外の機能

分散剤の分散以外の機能として、基材への濡れ性の向上があります。これは塗料などの場合、被塗物表面に塗料を塗布した時、組み合わせによっては濡れ性が悪くはじいてしまうことがあります。

はじきの原因は表面張力であり、液体と被塗物の接触面積をできるだけ小さくする力が働くからです。分散剤を加えることで表面張力が減少し、塗料が被塗物上に広がりやすくなります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikizai1937/78/3/78_141/_pdf
https://www.sannopco.co.jp/products/function/function2.php
https://www.toagosei.co.jp/products/polymer/acryl/dispersant.html
https://www.tetsutani.co.jp/wp-content/uploads/2015/12/21.pdf
https://www.sannopco.co.jp/products/sample.php?id=56219800&B=11
https://www.beckman.jp/resources/fundamentals/particle-size-distribution/basics/dispersion

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