イリサート

イリサートとは

イリサートとは、ねじ締結部において、めねじの補修や強化のために使うねじインサートの一つです。

ねじインサートはJIS B 0002-2で制定されている機械要素部品です。日本の工業界におけるねじインサートは、ヘリサートという名称で広く普及してきました。ヘリサートもねじインサートの一つですが、株式会社ツガミの登録商標です。

また、2001年からはE-サートの名称に変更されました。イリサートはヘリサートの欠点を改良した製品として、有限会社廣杉製機が開発したねじインサートです。

イリサートの使用用途

イリサートは、ナイロン、プラスチック、ジュラコン等の各種樹脂材、ダイキャストやアルミニウムなどのその他の軟金属材のねじ穴を強化するために使用されます。母材へのタップ加工のみでは締付力が得られない場合、雌ねじ強化や、締付けトルクオーバーなどで破壊されてしまった、雌ねじの補修などにも使用可能です。

イリサートは自動車部品、輸送機器、宇宙産業、電子機器、医療機器、映像機器、農業機械、遊具、楽器など幅広く使われています。

イリサートの原理

イリサートに限らず、ねじインサートは対象となるねじ穴の部分に、強度のある材料のねじ穴をねじ込んで埋め込むことにより、ねじ穴部分を強化したり、破損してしまったねじ穴を再生します。

つまり、イリサートを使うためには、締結に使うねじよりも大きいサイズの下穴加工が必要です。例えば、M8x1.25のイリサートの外径にはM10x1.0の雄ねじがつけられています。よって強化したいねじ穴部分には、M10x1.0の下穴が必要です。

また、イリサートを挿入するには、専用の治具を使います。治具には手動治具と電動治具があります。電動治具では電動ドライバーを使うことで、作業効率を上げることができます。

手動治具、電動治具どちらでも、挿入するイリサートのサイズにあった専用の治具が必要です。なおイリサートを抜き取る場合にも、専用治具を用います。

イリサートのその他情報

イリサートとヘリサートの違い

イリサートはヘリサートの欠点を解消するために、有限会社廣杉製機によって開発されました。ヘリサートは断面が菱形のステンレス鋼線をスプリング状にしたものですが、イリサートは棒鋼から切削加工によって作られた一体物です。ヘリサートに対するメリットは以下のとおりです。

1. 挿入後のタングの折り取り作業が不要
ヘリサートは挿入でねじ込むためのタングと呼ばれる部分があり、挿入後にはタングを除去する折り取り作業が必要です。それに対して、イリサートにはタングがないので、折り取り作業も必要ありません。

2. ピッチ飛びしない
ヘリサートはばねが伸びてしまうとねじピッチが崩れ、ねじが挿入できなくなるピッチ飛びが発生します。それに対して、イリサートは一体物なので、ピッチ飛びは発生しません。

3. 形状変化しない
ヘリサートを使っためねじにねじの脱着を繰り返すと、口元部分のばねが伸びて、ねじが締め付けられなくなることがあります。一体物のイリサートなら、このような形状変化は起こしません。

4. 挿入作業性が良好である
ヘリサートの挿入にはある程度の熟練が必要で、作業時間も約20秒ほどかかります。それに対して、イリサートの挿入作業の熟練は不要であり、4~5秒程度で作業できるとされています。

5. 下穴は市販タップで加工できる
ヘリサートの下穴は専用タップで加工します。イリサートなら市販のタップで下穴加工ができます。

6. 接着剤が使える
イリサートであれば、ねじインサートの固定を強固にするための接着剤が使えます。ヘリサートはばね構造のため、接着剤を使うと隙間から内側に漏れ込んできてしまいます。イリサートは一体物なので、接着剤の漏れ込みは起こりません。

参考文献
https://wilco.jp/products/ilisert.html
http://www.hirosugi.com/product/index.html
http://nejiya.secret.jp/nejiya.net/recoil/syousai/syousai1.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です