防塵マスクとは
防塵マスクとは、粉塵や煙など有害粒子が空気中に舞う作業現場において身に着けるマスクで、厚生省が定める国の検定に合格したマスクのことです。
建築物の解体現場で出る粉塵やアーク溶接の際に発生する溶接ヒュームなど、有害な粒子が舞う現場では、作業者の健康を守るためにマスクを着用します。そのマスクは作業者が有害物質を呼吸によって体内に取り込まないために、十分な保護機能が必要です。
防塵マスクの規格は粒子の収集効率に応じて3段階に分かれています。そして、作業現場の粒子の量によって、使用しなければならない防塵マスクの規格が法律で定められています。
防塵マスクの使用用途
防塵マスクは、その着用が義務付けられた作業現場で使用します。
人体にとって有害な粒子が舞う作業現場では、作業者の健康を守るために、防塵マスクの着用が各種の法律によって義務付けられています。具体的な作業現場としては建築や工事現場、アーク溶接を行う現場、岩盤などの裁断作業現場、金属等の研磨作業現場などです。
建築や工事現場と金属の研磨作業の現場や、岩石や他の硬い材料を裁断する作業では、細かい粉じんが発生します。これらを吸い込むと肺に悪影響を及ぼす可能性があるため、防塵マスクの着用が義務付けられています。
アーク溶接は、アーク放電で金属を溶かして接合する作業で、この過程で大量の金属の粒子が発生します。大量の金属粒子の集まりが冷えて煙のように見えるのを溶接ヒュームと言いますが、溶接ヒュームなどの金属粒子を吸い込むと、体内に蓄積されて神経障害や癌を引き起こすと言われています。
また、古い建物の解体現場では建築資材の中に含まれているアスベスト (石綿) が周囲に飛散する恐れがあります。アスベストの粉じんは非常に細かく飛散しやすく、これを吸い込むと肺線維症 (じん肺) 、悪性中皮腫、肺がんなどの健康被害を引き起こす可能性があります。アスベストを取り扱う作業者には、除去対象製品ごとに工法や着用すべき呼吸用保護具の区分が定められています。
防塵マスクの原理
防塵マスクは有害粒子が体内に取り込まれるリスクを低減させる具体的な効果について、国の規格によって規定されています。検定に使用する粒子の種類、粒子の大きさ、粒子の補修効率で規定し、その上で使い捨て方式のマスクかフィルター交換方式のマスクかに分けて記号化しています。
1. 粒子
検定に使用する粒子は、個体粒子として塩化ナトリウム (NaCl) の場合はS (Solid) 、液体粒子としてフタル酸ジオクチル (DOP) の場合はL (Liquid) としています。検定に使用する粒子の大きさは0.06μm~0.25μmです。
2. 粒子の補修効率
粒子の補修効率は3段階に分けられています。補修効率が99.9%以上のものを区分3、補修効率が99.0%以上のものを区分2、80.0%以上のものを区分1としています。
3. マスク
そして、使い捨て方式のマスクを記号D 、フィルター交換方式のマスクを記号Rで表現しています。従って、使い捨て方式のマスクで、個体粒子を対象に95.5%の補修能力があると検定されたマスクはDS2と表現され、フィルター交換方式のマスクで液体粒子を対象に99.9%の補修能力があると検定されたマスクはRL3などと表記されます。
防塵マスクの選び方
防塵マスクの選択の際には、法令に適合したマスクであることを第一に、作業者の顔に正しくセットすること、他の防具と併用の際の干渉の有無などを考慮して選択する必要があります。
どのクラスの防塵マスクを着用すれば良いかは、粉塵の種類と濃度などによって、様々な法律で規定されています。作業現場の粉塵の状況を測定した上で、その規定に適合したマスクかそれ以上のクラスのマスクから選択しなければなりません。
また、アーク溶接の現場では、溶接の際に発生する有害光から目を守るための保護面の着用が義務付けられています。防塵マスクは保護面との併用となるので、両方を同時に着用できる必要があります。同様に、建設現場などのヘルメットとの併用などもあり得ます。
防塵マスクは、使い捨てマスクとフィルター交換方式に大別されますが、さらに形状や装着方法、呼吸を助けるファン付きなど、様々なタイプのものが市販されています。上記のことを考慮した上で、最適なものを選択することが大切です。