自動遮光溶接面

自動遮光溶接面とは

自動遮光溶接面は、アーク溶接の作業者が作業時に着用する保護面の一種で、自動的に透過する光の量を調節できる機能を持った面です。

アーク溶接では、眼に有害な強い光が発生し、防護策なしでは目に様々な障害が発生します。また、溶接時に発生する火花は、皮膚にあたると火傷を起こす恐れがあります。

そのため、アーク溶接の作業者は作業をする際には、眼と顔を守るために、保護面を着用するよう義務付けられています。保護面には、手持ち型、被り型、自動遮光溶接面などのタイプがあります。自動遮光溶接面は、アークの点灯に反応して液晶フィルターが遮光膜を作り、有害な光から目を保護する高機能な保護面です。

自動遮光溶接面の使用用途

自動遮光溶接面は、溶接作業時に作業員の目と顔面を保護する目的で使用します。溶接作業時に発生する人体への悪影響には、スパッタの強い光による目の損傷、スパッタによる火傷、溶接ヒュームの体内への取り込みなどがあります。

スパッタはアーク溶接の際に高温に熱せられて飛び散る金属粉です。熱と共に強い光を発します。特に波長が200nm~380nm付近の紫外線と、波長が400nm~570nm付近の可視光線は眼に有害だとされています。また、スパッタは高温なため、皮膚にあたると火傷を起こします。

自動遮光溶接面は頭からかぶるタイプの面であり、首から上の全体を覆い保護します。顔面部のシールドはアーク光を感知すると自動的に黒く変色するので、熱と有害な光から頭と顔、それに眼を守ります。

また、自動遮光溶接面の中には溶接ヒュームに対する防護機能を備えたものもあります。

溶接ヒュームは、溶接によってスパッタになって空気中に出た金属が、冷えてできる金属微粒子の集まりです。溶接ヒュームが発生すると白い煙のように見えます。溶接ヒュームを呼吸によって体内に取り込むと、なかなか排出されずに体内に蓄積されてゆきます。その結果、肺癌や神経障害など重篤な健康障害を引き起こすと言われています。

自動遮光溶接面の原理

自動遮光溶接面は、アークの点灯を感知するセンサーと、液晶フィルターを内蔵した顔面部のシールド、それの駆動用のバッテリーや太陽電池、または電池を持っています。

センサーは自動遮光溶接面に1個から複数個取り付けられています。センサーがアークの点灯を感知すると、液晶フィルターに瞬時に信号が流れ、液晶フィルターは遮光膜を形成して光の透過率を下げます。遮光の度合いは製品によってまちまちですが、遮光度をいくつかの段階に変えられるものもあります。

センサーがアークの点灯を感知してから、遮光膜ができるまでの遮光速度が速いほど、眼にダメージを与える時間が短くなります。遮光速度は速いものでは0.1m秒ほどです。

アークを検出しなくなると、遮光膜が消えるまでの時間を戻り速度と言います。戻り速度は数十m秒から200m秒程度であり、遮光速度と比較するとかなり遅い値になっています。

また、液晶フィルターの前後には、紫外線フィルター (UVフィルター) や赤外線フィルター (IRフィルター) などが積層されています。これにより、遮光膜が形成されていない状態でも、ある程度の目の保護機能を持っています。そのために、自動遮光溶接面は液晶フィルターが作動しない時でも、顔面部のシールドはサングラスのように着色しており、ある程度の有害光の透過を抑えています。

自動遮光溶接面の選び方

自動遮光溶接面を選択する際には、遮光度、遮光速度、重さやかけ心地などを考慮して選択します。

遮光度は、適切なものを選ぶ必要があります。アーク光に対して遮光度が不足していると、ダメージの蓄積によって目に障害が発生するおそれがあります。また逆に遮光度が強すぎると手元が見にくくなり、作業の効率が落ちます。作業時のアークの強さや、作業場所の明る差を考慮して選択する必要があります。

なお、自動遮光溶接面では、遮光度の調節機能を備えたものもあります。

遮光速度は早ければ早いほど、眼にダメージを与える時間が短くなります。なるべく早い遮光速度を持ったものが良いでしょう。

さらに、自動遮光溶接面は頭からかぶるので、着脱があまり手軽ではありません。自動遮光溶接面を一度被ると、そのまま長時間作業を続ける場合もあります。そのため、首への負担を抑えるために、なるべく軽くて、重量バランスが良いものを選択するのが良いでしょう。

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