ベベルギヤ

ベベルギヤとはベベルギヤ

ベベルギヤとは、垂直に配置した2つの軸の間で回転動力を伝達する円錐形の歯車のことです。

傘歯車とも呼ばれます。工作機械や産業用ロボット、自動車のデファレンシャルギヤなど多くの機械において実績があり、回転方向や回転速度を変更する減速機としての利用も可能です。伝達する動力が大きい場合や高速回転時の騒音を抑えたい場合には、歯面が曲線状に捻れているスパイラルベベルギヤ (曲がり歯傘歯車) が使用されます。

ベベルギヤの使用用途

ベベルギヤは、回転軸の動力を直行する軸に伝達する機構として使用される場合が多いです。世の中の産業用機械で広く用いられています。特に自動車や列車では、エンジンやモーターによって生み出された回転出力を任意の直角方向に伝達する機構としてベベルギヤが使われます。

また、平歯車と同様に歯車の歯数を変更すると、動力の回転数とトルクを変換することが可能であるため、減速機としての機能も有しています。ベベルギヤを介して2つの回転軸を直線状に接続することにより、2軸間の動力伝達をしながら回転数の差を吸収する特性を利用可能です。

これは、特に自動車が右左折する際に左右の車輪の回転速度の差を許容するデファレンシャルギヤ (差動装置:デフ) として使用されており、ベベルギヤは自動車がスムーズにカーブを曲がるための重要な構成部品になります。

ベベルギヤの原理

ベベルギヤの動作原理は、広げた傘のような円錐面上に歯を刻んだ2つの歯車同士を組み合わせることで、平行でない (例えば直角に配置されている) 歯車の中心の軸と軸の間の回転動力を、効率よく伝達することを可能としている点にあります。ベベルギヤの歯は一般的な平歯車と同様に歯の噛み合いによって動力を伝達するため摩擦力の影響を受けにくく、動力伝達効率は98%以上を実現しています。

ただし、軸の回転速度を大きく設定しすぎると歯が接触する際の衝撃力が騒音となって生じ、伝達効率も低下してしまいます。回転速度が大きい場合には、歯の接触面積が大きいスパイラルベベルギヤを使用することで、騒音を防ぐことが可能です。スパイラルベベルギヤは強度においても優れるため、伝達する力が大きい場合や減速比を大きく設定したい場合などに有効であると言えます。

ベベルギヤの種類

ベベルギヤには、通常のベベルギヤのほかに、、スパイラルベベルギヤやハイポイドギヤ、ゼロールギヤ、マイタギヤなどがあります。

1. スパイラルベベルギヤ

ベベルギヤの歯面が螺旋状の渦巻きの歯を有しており、かみ合わせ時の歯面への負担が少なく高速回転時の騒音が小さいのが利点です。曲がり歯傘歯車とも呼ばれます。

2. ハイポイドギヤ

スパイラルベベルギヤの直交軸のピニオン側をオフセットさせたベベルギヤです。軸をずらすことでベベルギヤに比較してかみ合い率を高めて回転のトルクを大きくすることができますが、伝達効率は下がります。

3. ゼロールギヤ

ストレートベベルギヤ (すぐ歯傘歯車) とスパイラルベベルギヤ (曲がり歯傘歯車) の特徴を併せ持つベベルギヤです。ねじれ角がゼロである点が特徴です。

4. マイタギヤ

ベベルギヤのうち、軸角度が90°で歯数が1:1であるものを言います。変速の必要がなく、回転軸を変換させたいだけのときに使われます。

ベベルギヤのその他情報

ベベルギヤのピッチ円直径

ベベルギヤは歯車が噛み合う位置が設定されており、この位置を示す円の直径がピッチ円直径です。2つの軸をベベルギヤにより接続する際には、互いのベベルギヤのピッチ円が接触する距離で配置する必要があります。据え付けに大きな誤差がある場合は、伝達効率が大きく低下してしまいます。

平歯車と同様に、ベベルギヤの歯形はインボリュート形状となっているため多少の誤差は許容されますが、設置する際には注意しましょう。また、ハイポイドギヤのように、かみ合い率が大きく減速比率 (回転トルク) が大きいベベルギヤではその分発熱量も増加するため、専用のギヤオイルが必要です。

ちなみに、ハイポイドギヤは焼き付き防止の専用オイルが実用化されたことを受け、自動車用にギヤとして実用化された開発の経緯を有します。

参考文献
https://www.khkgears.co.jp/khk_products/Bevel.html
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/kikaikiso_0108/
https://www.zurich.co.jp/car/useful/guide/cc-whatis-differential-gear/

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