ヒートポンプ

ヒートポンプとは

ヒートポンプとは

図1. ヒートポンプとは

ヒートポンプとは、空気や液体中の熱を低温部から高温部へ移動させる技術です。今や生活に欠かすことのできないエアコンや冷蔵庫、エコキュートなどに利用されています。

熱を移動させるために電力を消費しますが、その消費量よりも大きな熱エネルギーを生み出すことから、高い省エネ効果が見込まれています。また、ガスや石油を燃焼する方式に比べてCO2の排出量を大幅に削減できることから、地球に優しい環境技術という側面でも注目を集めている技術です。

ヒートポンプの使用用途

ヒートポンプは、かつては主に冷蔵庫や冷房に用いられ、物を冷やす冷熱用として使われていました。しかし、技術の進歩により低温から高温への用途が広がり、暖房や給湯などさまざまな分野で利用されるようになってきました。

家庭の中では、冷蔵庫やエアコン、洗濯乾燥機など毎日の生活に欠かせない家電製品に使われ、省エネ効果の高いエコキュートや床暖房などの設備にも使われています。また、オフィスや病院など利用者の多い施設では業務用のエアコンや給湯器などに利用され、大幅な光熱費の削減が期待されています。

ヒートポンプの原理

ヒートポンプの原理

図2. ヒートポンプの原理

気体は圧縮すると温度が上がり、逆に膨張させると温度が下がります。ヒートポンプはこの性質を利用し、熱を移動させています。そして、熱を移動させるフロンのような冷媒は常温に近い温度で圧縮や膨張により液化と気化を繰り返すことで、効果的に熱を移動させることができます。

ヒートポンプの構造は、圧縮機・膨張弁・蒸発器と凝縮器と呼ばれる2つの熱交換器、これらをつなげる配管から構成されており、配管の中には低沸点の冷媒が循環しています。

冷媒は熱エネルギーを移動させる役割を持つ媒体です。主にフロンガスが使用され、圧力や温度により蒸発と凝縮を繰り返し、気体や液体に変化します。

膨張弁は高温高圧になったフロンガスを急激に膨張させて温低圧状態にし、再び液体にする器具です。

圧縮機はフロンガスを圧縮して高温高圧にする機器です。遠心式圧縮機や往復動圧縮機などがあります。

熱交換器は役割から蒸発器と凝縮器の二つに分けられます。蒸発器は熱を外部から吸収してフロンガスを気体に変えるための働きをし、凝縮器は気体を液体に変え、熱を外部に放出する働きを持ちます。

冷媒は蒸発器で熱を吸収し、気体化して圧縮機に吸収されます。高温高圧に圧縮された気体は、凝縮器に送られ液体になり、膨張弁で低温低圧にされ再び蒸発器に戻ります。ヒートポンプは、これらのサイクルを繰り返し行うことで、空気中の熱を低温部から高温部へ移動させているのです。

ヒートポンプの種類

ヒートポンプは熱輸送の原理によって下記の通り類別されます。

1. 冷媒の発熱、吸熱を利用したヒートポンプ

蒸気圧縮ヒートポンプや、吸収式ヒートポンプ、吸着式ヒートポンプは、冷媒が気化する際に発生する気化熱、凝縮熱を利用します。アンモニアの気化熱を利用したヒートポンプは冷蔵庫や冷凍庫に主に利用されています。

2. 空気熱以外の熱を利用したヒートポンプ

地中熱、水源熱、太陽熱を利用したヒートポンプになります。いずれの場合も熱源が近くにある必要がありますが、空気熱と比較して熱を効率よく伝播することが出来ます。

3. 格子振動を用いたヒートポンプ

半導体を用いたヒートポンプです。電流を熱電素子に流すことで、素子において格子運動を発生させます。この格子運動によって熱移動を行うと、細かい温度コントロールが可能となります。そのため、精密な温度コントロールを必要とする医療器具、実験装置に主に利用されています。しかしながら、高性能な分、高コストなヒートポンプとなっています。

4. その他のヒートポンプ

最近は熱電導と気化熱の両方を利用したヒートポンプが現れ始めました。この通り、年々新たなヒートポンプ技術が開発されてきており、より効率的に熱を取り入れて蓄えることが可能になってきています。

ヒートポンプのその他情報

1. ヒートポンプの性能指標 

ヒートポンプの性能は消費電力(kW)に対して生み出せる冷却または暖房能力(kW)の比で表され、これをエネルギー消費効率COP(Coefficient Of Performance)と呼びます。この値が高いほど省エネ効果が期待でき、特にエアコンでは冷房COP、暖房COPとしてエアコンの省エネ能力を表す指標として用いられています。

しかし、COPは一定の温度環境下でのエネルギー消費効率を示すものであり、実際にエアコンを使用する場合は部屋や外の温度によって性能が異なります。そのため、現在では省エネ基準として通年エネルギー消費効率 APF (Annual Performance Factor)が主流となっている。APFは2006年9月に改正された「省エネ法」でCOPに代わる省エネの指標として定められており、COPと異なり1年間運転した場合の運転効率を示しています。そのため、APFはより実際の運転に近い運転効率を示していると言えます。

2. ヒートポンプのメリット・デメリット

効率的に外部から熱を集めて大きな熱源として利用する技術、ヒートポンプのメリット、デメリットをご紹介します。

メリット

  • 節電になる
    熱を外部から集めることで、新たに熱を作り出す必要がないため、ヒートポンプを搭載した電子機器は電気代が比較的安いです。
  • 安全性が高い
    熱を生み出す際に燃焼を伴わないため、安全性が高くなっています。
  • 二酸化炭素排出量の抑制が期待できる
    燃焼という過程がないため、二酸化炭素排出量は比較的抑えられます。

デメリット

  • 外部環境に左右されやすい
    ヒートポンプは外部から熱を集めるため、外気温が低い場合などはかえって効率が悪くなってしまいます。

3. ヒートポンプの効果的な利用方法

ヒートポンプの温度差

図3. ヒートポンプの温度差

ヒートポンプは消費電力以上の冷房・暖房能力を生み出せることから省エネ・省コストに優れているが、外部環境に作用されやすいというデメリットがある。しかし、ヒートポンプは小さな温度差から大きなエネルギーを取り出せるため。より効果的に利用することでさらなる省エネ効果が期待できる。

ヒートポンプは熱移動によって、片側は加熱され、もう片側は逆に冷却される。通常であればどちらかの利用となるが、加熱と冷却を同時に利用できるシステムを構築すれば、より大きな省エネ効果を生み出すことが可能である。

また、ヒートポンプの効果的な利用方法として地下熱を熱源として用いる方法がある。外気と比較して地下熱は年間を通して温度変化が少ないため、地中や地下水の温度は夏は冷たく、冬は暖かい。これを利用することで、地中にある未利用熱を有効利用することができ、CO2の排出を大きく抑えることができます。

そのほかにも工場排熱や温泉の排湯などそのままでは利用が難しい熱エネルギーを最大限利用できることがヒートポンプの最大の特徴といえます。

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