リン酸肥料とは
リン酸肥料とは、主成分としてリン (P) を含有する肥料の総称です。
リンは窒素 (N) 、カリウム (K) と並んで肥料の3大要素とされています。特に開花、結実を促す効果があり、リン酸肥料は別名で花肥、実肥などとも呼ばれています。リンが欠乏した作物は生育が弱まるだけではなく、開花や成熟が遅延する可能性が高いです。
結果として実の収量が落ちたり、味がぼけたりするため、農作物に重要な栄養素です。また、リン酸は日光や光合成でできた太陽エネルギーや呼吸エネルギーを作物の成長エネルギーに転換させる大切な役割があります。
古くは骨粉、米ぬか、灰といったリン酸を多く含むものを有機質肥料として用いていましたが、現在では過リン酸石灰などを原料とした無機質リン肥料が主流です。さらに、現在では2つ以上の成分を含む複合肥料を用いる割合が高くなっており、リン酸肥料を単独で施肥するケースは少なくなっています。
リン酸肥料の使用用途
リン酸肥料は、植物に必要不可欠な栄養素であるリン酸を補い、植物の生育を助ける際に使用されます。特にリン酸は植物の花芽充実や結実の促進、果実の品質向上などが目的です。そのため、花や実をつくる生殖生長期や果実の肥大期に使用すると、より高い効果が期待できます。
また、植物体を作るのに必要なたんぱく質や遺伝子の元になる核酸の構成成分でもあるため、栽培の初期から必要な栄養素です。現在、主に用いられているリン酸肥料は無機質製品が多くなっていますが、肥料の種類によって効果の作用が異なります。過リン酸石灰などのリン酸肥料は即効性肥料といわれ、すぐに水に溶けて根から作物に吸収されます。
一方で、熔成リン肥などのリン酸肥料は水に溶けにくく、ゆっくりと作用して効果が長く続くことから緩効性肥料といわれれる肥料です。熔成リン肥はアルカリ性のため、特に土壌のpH調整に用いることが可能であり、リン酸を吸着するアルミナ (アルミニウムの酸化物でリン酸を吸着すると作物のリン酸吸収の阻害になる) の活性を抑制する働きもあります。
リン酸肥料の特徴
長所
- 適切な量と回数あたえることで、より花や芽がついたり、果実の品質向上につながります。
- 葉面散布で使用できるため、花や実をつくる時期や果実の肥大期など散布したいタイミングで散布し、早く効かせることができます
- 農薬と混合して使用できるものもあるため、作業の省力化につながります。
短所
- 入れすぎると農作物の背丈が伸びず生育不良を起こしたり、亜鉛や鉄など微量要素の吸収阻害を引き起こします。
- リン酸は他の成分と比べ、植物への吸収率が低いです。固形状、液体状どちらも散布するなどの対策を行わないと、リン酸不足になってしまう可能性があります。
リン酸肥料の種類
リン酸肥料は形状によって、次のような種類に分類できます。
1. 固体状リン酸肥料
固体状リン酸肥料は、形状が粉や粒の固形状の肥料になります。固体状のものは基本的に、農作物の植え付け前の土壌に散布、混和して植物の根からリン酸を吸収させます。
リン酸肥料は土の中で移動が少なく、根からの追肥で補うことが難しいため、植え付け前の散布で不足なく散布しておくことが重要です。
2. 液状リン酸肥料
液状リン酸肥料は、液体のリン酸肥料を希釈し、農作物の葉面に散布し使用します。葉面に散布して植物に吸収させるので、ある程度農作物を成長させてから使用します。
固体状リン酸肥料と比べ、農作物への吸収が早いため、追肥や花芽がつく時期、果実の肥大期での散布が効果的です。また、液状リン酸肥料は農薬散布時に混ぜて使用できるものもあり、作業の省力化につながります。
リン酸肥料その他情報
リン酸肥料の注意点
- 液状リン酸肥料は、アルカリ性の物質や石灰硫黄合剤と混ぜて使用することができません。
- 高濃度で散布してしまうと、根や葉に炎症が出てしまう可能性があるため、適切な濃度で使用することが大切です。