補助人工心臓

補助人工心臓とは

補助人工心臓とは、重度に心臓機能が低下し全身に十分な血液を送り出すことが困難になった患者を支援するために使用される医療デバイスです。

この機器は主に心不全患者や心臓移植を待機する患者の生命維持を目的とし、人工的に血液循環をサポートする役割を担います。補助人工心臓には胸部や体外に装着するタイプがあり、ポンプや駆動装置などで構成されています。左心室を補助する左心補助人工心臓、右心室を補助する右心補助人工心臓、さらに両心室を補助する両心補助人工心臓といった種類があります。

近年では短期使用に加え長期使用も可能となり、患者の生活の質を高める重要な技術として注目されています。補助人工心臓は患者の状態に応じた適切な管理と維持が必要であり、短期的な命の維持から長期的な生活の質向上に至るまで多彩な役割を果たす医療機器です。

補助人工心臓の使用用途

補助人工心臓は著しく低下した心臓の機能を補助するデバイスで、その用途は主に3つのカテゴリーに分類されます。

1. 心臓移植までの橋渡し (BTT: Bridge to Transplantation)

心臓移植を必要とする患者がドナーを待つ間、生命を維持するために用いられます。重症の心不全患者では心臓移植が唯一の治療法となることがありますが、適合するドナーを見つけるには時間が掛かる場合があります。この間、補助人工心臓が心臓機能を補完し血液循環を維持することで、臓器損傷や合併症を防ぐ役割を果たします。

2. 心機能回復までの橋渡し (BTR: Bridge to Recovery) 

一時的に心臓機能が低下している患者の心臓の負担を軽減し、自然回復を助ける目的で使用されます。急性心筋炎や心筋梗塞の後に心臓の機能が著しく低下した場合、心臓を一時的に休ませるために使用されることがあります。心機能が回復した場合は装置は取り外すことが可能です。

3. 治療方針決定までの橋渡し (BTD: Bridge to Decision) 、または最終治療  (DT: Destination Therapy) 

治療方針が確定していない場合に一時的に使用される「橋渡し先不明」の用途や、心臓移植の適応がない患者に対し長期にわたり使用する「最終治療」の用途があります。特に最終治療としての補助人工心臓は、移植適応外の慢性心不全患者や高齢者の生活の質を向上させ、長期的な生存を可能にする重要な選択肢として位置付けられています。

参考文献
https://www.jseptic.com/ce_material/ce_material_19.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjcsc/28/0/28_44/_pdf/-char/ja