薬品保管庫とは
薬品保管庫とは、薬品 (試薬) 保管のための特別な保管庫です。
試験研究施設や工場、医療施設、教育機関で使用されます。期待される機能としては、薬品を適切に分類し、試薬瓶が転倒しないように保管できること、薬品が変質しない配慮がされていること (一定の風通しまたは換気装置の使用) 、必要に応じて施錠できることなどです。
保管庫の機能が、収納する薬品を規制する法令に適合していることが重要です。
薬品保管庫の使用用途
薬品保管庫は薬品を使用する施設で、薬品を管理した状態で保管する際に用いられます。使用目的は、以下の通りです。
1. 安全性確保
薬品保管庫は薬品や化学物質を適切に保管し、破損や火災、盗難などからのリスクを最小限に抑えることが期待されています。破損に対しては、本体が丈夫であり、試薬瓶を転倒しないように収納できることが重要です。
火災に対しては難燃性の保管庫を使用し、可燃物から遠ざけて設置することがリスク低減になります。盗難に対しては、丈夫なスチール製の薬品庫に施錠する対策が行われます。
2. 品質保持
適切な温度、湿度、光の条件下で保管することを実現します。多くの薬品庫で光が入らない設計になっており、熱・湿気が滞留しないように風通しの良い設計になっており、換気装置を備えたものもあります。
3. 耐久性
プラスチックを溶かす試薬や金属を腐食させる試薬もあるため、万一の漏洩や蒸気の曝露に備え、耐久性の高さが求められます。塩化ビニル製、ステンレス製や、スチールを耐久性の高い塗料で仕上げたものが多いです。
4. 分類
整理して収納することで、試薬の分類を行い、取り出しや管理を容易にすることも期待される機能の1つです。
5. 法規制の遵守
化学物質の取扱いに関する主な法令として、以下が挙げられます。
- 消防法
- 毒物及び劇物取締法
- 医薬品医療機器等法 (旧薬事法)
- 麻薬及び向精神薬取締法
薬品保管庫に期待されることの1つが、これらに適合した条件で保管できることです。例えば、毒物・劇物指定されている試薬の場合、毒物及び劇物取締法により、「鍵のかかる丈夫な」保管場所に「必ず施錠」して「鍵の管理を行う」ことが義務付けられています。
この場合は、鍵付きの薬品保管庫を選び、保管場所には、試薬に応じて「医薬用外毒物」「医薬用外劇物」等と表示します。
薬品保管庫の原理
薬品保管庫は、薬品で傷まず、試薬瓶が転倒したり瓶同士が接触したりしないという機能を満たすように設計されています。浸透性が無く、耐久性が高い材質で構成されているのが特徴です。
試薬瓶の間には仕切りが設けられるのが一般的で、これにより試薬瓶相互が接触して破損することを防ぎます。
薬品保管庫の選び方
薬品保管庫には様々な材質、形状のものがあります。以下の特徴をもとに、目的に適したものを選びます。
1. 材質
塩ビ製 (PVC製)
耐薬品性、特に耐酸性に優れています。小型のものは軽量のため、持ち運びに適しています。
ステンレス製
耐腐食性、耐アルカリ性、導電性に優れています。
スチール製
耐食性、耐水性、耐湿性などを持たせるために、合金化溶融亜鉛メッキやメラミン焼き付け塗装をしている商品があります。ステンレスよりも安価に入手できます。
2. 盗難防止機能
薬品保管庫には、麻薬等の保存に用いられる金庫タイプのものもあります。また、盗難を避けるために、箱底を床にネジで固定して設置されるものもあり、盗難防止を重視したものの材質はスチール製が多いです。
施錠機能に加え、解錠に生体認証を利用できるもの、解錠履歴を電子的に保存できるものなども販売されています。
3. 保管条件
遮光が必要な試薬は、窓が無い保管庫を採用するのがより安全ですが、部屋の光が制御可能であれば、中が見える使いやすさを考慮して窓付きのものを選択することもできます。
換気が特に重要な場合は、排気機能の付いた保管庫を検討します。
4. サイズ
収納したいもののサイズを考慮する必要があります。試薬瓶は規格化されているので、使用したいものに合わせて選択します。
保管庫自体のサイズについては、持ち運びができるものもあります。施錠した状態で持ち運ぶなど、用途に合わせて選択することが重要です。
参考文献
http://www.nihs.go.jp/mhlw/chemical/doku/hokan/hokan.html
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ghs_symbol.html