ピロボール

ピロボールとは

ピロボール (英: pillow ball) とは、衝撃や振動を吸収するサスペンションやスタビライザーなどの継手と呼ばれる機構に使われている金属製の部品のことです。

ピロボールは別名スフェリカル・ジョイント (英: spherical joint) と呼ばれ、単純な回転や直線的な運動だけではなく多方向に関節のような働きをします。

主に車の足回りの純正ブッシュをピロボール式のブッシュに変えることをピロ化すると言います。

ピロボールの使用用途

ピロボールが最もよく用いられるのは自動車の足回りのサスペンションやアーム類です。従来品のゴムブッシュと比較すると制約なく自由に動くため、路面からステアリングへ伝わる路面状況などの情報が増加し、路面をより直接的に感じます。

製造業でもピロボールは、主に工作機械、繊維機械および包装機械などの制御機構やリンク機構の軸受けとして幅広い現場で使用されています。

サスペンションなどの受け手としてゴムブッシュ (英: rubber bush) と呼ばれる部品が使用されますが、強度や性能を高めたい場合にはピロボールが用いられるケースも多いです。

ピロボールの原理

ピロボールはわずかな容積で大きなラジアル荷重と両方向のアキシアル荷重を同時に負荷できます。ラジアル荷重とは軸に対して垂直にかかる荷重のことで、アキシアル荷重は軸と同一方向にかかる荷重です。

部品同士を繋ぐため、ゴムブッシュやピロボールが使用されます。ゴムブッシュに強い力が加わると一時的にたわんで本来の位置から部品がズレます。ただしピロボールの場合には内部にある球状のパーツがスライドするため、軸が中心に移動してズレることはありません。さらにピロボールは回転方向にも制限なく動くため、動きがスムーズです。

ピロボールの種類

ピロボールは滑り面により、主にインサート形、ダイカスト形、無給油式の3種類に分類可能です。

インサート形やダイカスト形のピロボールは給油が必要で、定期的に接触面に専用グリスなどで潤滑性を維持します。無給油のまま使用すると摩擦・摩耗によって焼き付きの原因になります。また形式によって使用環境の許容温度が異なり、インサート形で180°C、ダイカスト形で80°C、無給油式のもので150°Cが一般的です。

1. インサート形

インサート形は球面内輪と親和性のある特殊銅合金ブッシュとの接触を利用します。

2. ダイカスト形

ダイカスト形は球面内輪と特殊亜鉛合金との接触が特徴です。

3. 無給油式

無給油式は球面内輪と自己潤滑性のある特殊なフッ素樹脂ライナーとの接触により、円滑な回転・傾斜運動が可能です。

ピロボールのその他情報

ピロボールの特徴

市販車に多く用いられるのはゴム製のサスペンションブッシュですが、サーキットを走るレースカーなどには金属のボールを使ったピロボールが一般的に使用されます。

1. 正確性
サスペンションアームは金属ですが、一般的にボディ側やタイヤ側にはゴムブッシュが使用され、ゴムが振動や異音を吸収します。レーシングカーにはピロボールが使われており、物体間のわずかな隙間を保持します。

ゴムブッシュにはルーズさがあり、荷重の変化などでブッシュが潰れてアライメントが変わりますが、ピロボールにはゴムブッシュのような曖昧さがありません。金属製のピロボールには変化量がほぼないため、意図せずアライメントが変化しません。

2. 安心感
ゴムブッシュを使うとコーナリングの際にキャンバ角が立ってきたり、トー角が変わる可能性があります。キャンバ角 (英: camber angle) とは前や後ろから車を見たときのホイールの倒れ角度を指し、トー角 (英: toe angle) は真上から車を見たときのホイールの角度です。

純正の足まわりはブッシュの硬さを変えたり、厚みを制御して、意図的にアライメントが変わるように設計されています。しかしサーキットなどではドライバーが変化に対して不安を覚えやすいため、その点でピロボールは走る安心感を与えます。

3. 乗り心地
ゴムブッシュはサスペンションに加わる衝撃を吸収し、サスペンションにも衝撃が吸収されます。一方でピロボールは衝撃を吸収せず、サスペンションだけが吸収します。したがってサスペンションへの入力が増加するため、サスペンションの抵抗を感じにくいです。乗り心地を悪くするフリクション (英: friction) と呼ばれる抵抗力を超える力が常に入力され、乗り心地が良くなります。

参考文献
https://www.ikont.co.jp/product/needle/ndl10.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です